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モード学園スパイラルタワーズ
  時代の接点に立つ建築 [設計者は語る]



自由な発想のデザイン

 「モード学園スパイラルタワーズ」は、コンペティションで日建設計が 設計者に選定されました。応募は1 社で何案提出してもよく、参加社の中には 30 案、50 案と出したところもあったと聞きます。また、特徴的なのは、 応募要項に「名古屋の駅前は四角い箱のビルばかりだから、それ以外の形が 望ましい」という内容の一文があったことです。
 
 われわれは7 案を提出しましたが、その中から採用されたのは、少し意外な 案でした。実はそれは最後に考えた案で、他の6 案は機能面も重視していましたが、 採用された案は、まったく自由な発想でデザインを進めたものだったからです。 コンペチームが初めて集まったとき、当時の日建設計・名古屋代表(浜田明彦) の第一声は「今回はフレッシュに行こう」でした。日建設計のこれまでの実績を いったん脇に置いて、ゼロから取り組めということですが、それに応えた案が 選ばれたのです。
 
 3 つのヴォリュームからなるスパイラル状のデザインは、3 つの学校 (名古屋モード学園、HAL 名古屋、名古屋医専) の学生のエネルギーが、 絡まり合いながら上昇し、社会へ羽ばたいていく様を表しています。

 

構造が示した方向性

 実施設計に入ってからは紆余曲折がありました。まず、学長に模型をお見せして 外形を検討するやり取りを繰り返しました。今回の場合、建築の外形が 決まらないと、内部をはじめとする全体の設計に手を付けられないので、それを 先行して決定することが重要でした。
 
 これまでにない形の建築ですが、技術的な問題は何とか解決できるだろうと 思っていました。しかし、どういう方向で整理していくのかが重要で、 建物の形がねじれているのに、真っ直ぐな柱を建ててつくっても面白くない。 ねじれている建物だから、ねじれた構造にしようと考え、それには当社構造部門の山脇克彦たちが応えてくれました。構造の方向性が出た段階で、かなり まとまったと思います。
 
 提案段階では、3 棟が寄り添うような構造で、カーテンウォールの内側に ブレースを入れ、スパンも半分ほどでしたが、学長は「透明感を大切にしたい、 柱の本数もなるべく減らしたい、その代わり内側のコア部分は太くしてもいい」 とお考えでした。そこで、試行錯誤を繰り返した果てに、 「インナートラスチューブ」と呼ぶ、いわば大黒柱で中心部を固め、周りを軽く することを構造担当者が思いついたのです。これにより、いろいろなことが 整理できました。
インナートラスチューブは、同じ太さだと、上階になるほど床面積が小さくなり、 その周囲にスペースが取れなくなります。そのため床面積の有効率を考慮し、 インナートラスチューブは24 階で太さを絞り、その上階にも十分なスペースを 確保しています。
 

先端技術と熟練技能の接点

 難しい工事で、工期も短い中、施工の大林組さんが丁寧な仕事をしてくれ大変助かりました。この建物は、柱が真っ直ぐに建っているビルとは違いますので、 精度確認が難しく、工事監理も大変だったと思います。監理担当者に聞いたところ、 これまで経験した超高層ビルの20 倍も大変だったと言われました。
 
 外装については、監理メンバーのほか、日建設計OB の横田暉生さん (横田外装研究室) やYKK ・AP の技術陣がバックアップしてくれました。 曲面を三角形の多面体でつくるという発想は最初からありましたが、それを 実際にどう組み立てるかなど、現場段階で詰めたことが多かったです。
 
 サッシュと鉄骨は今回特に苦労したところです。溶接は微妙な熱のかけ具合が重要で、そうした職人技で構造体をつくったわけです。鉄骨の仕口も大変複雑です。 コンピュータの解析技術やCAD の進歩によって、これまでにない形の建物が できるようになりましたが、片や、鉄骨の溶接や施工の精度監理は人が行います。 これまで培われてきた技術があってこそ可能になったわけで、たとえば50 年後、 熟練の職人さんが消えてしまえばこういう建物はできなくなるかもしれません。 その意味で、スパイラルタワーズは今という時代の接点にできた建物だと言えます。
 

街に活気を

 出来上がってみて、下から見上げたときの柔らかい曲線は予想以上で、ドレスを 纏っているようにも見えます。名古屋の駅前は地下街が浅い位置にあるため 高木が少ないのですが、緑豊かな街をつくりたいと、できる限りの植栽を 施しました。それらの樹木が大きく育つと、ビルの足元はより豊かな表情を 見せ、さらに街に活気を与えると思います。        (聞き手: 石堂 威)

日建設計 設計部門副代表兼設計室長 若林 亮(わかばやし まこと)
設計部門設計室主管 右高 博之(みぎたか ひろゆき)


¶:写真撮影 鈴木研一

*出典は日建設計― Quarterly Vol.21 2008 Summer−NIKKEN SEKKEI  こちら(PDF:750KB) 。
(O-A-001-03)


*日建設計-プロジェクト こちら


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