IDEAS

LIFE 04

夏の屋外を涼しく過ごすためのアイディア

ヒートアイランド現象が年々進行し、熱中症の危険性も増しています。
都会の夏の屋外を安全に快適に過ごすための
都市エネルギー消費ゼロのクールスポット「COOL TREE」を紹介します。

夏になると全国的に厳しい暑さが続く近年、屋外暑熱対策は喫緊の課題となっています。日建設計は、環境技術とデザインの力を組み合わせたクールスポットを構想し、銘建工業・光栄・村田製作所といった他分野の専門家と知見を結集しての共同開発を行いました。樹木を模した開放的な形で、炎天下でもまるで木陰にいるかのような涼しさを満喫できる、その名もCOOL TREEの誕生です。

生産エネルギーを抑えるために国産ヒノキの間伐材で造られた構造物には、涼しさを生み出す最先端のテクノロジーが内蔵されています。その電力は、都市インフラに頼らず、太陽光パネルの発電だけで賄います。IoT技術でデバイスを省エネルギー稼働させることにもこだわりました。

ではCOOL TREEには、どんな涼しさの仕掛けがあるのでしょうか。第一に、直射日光をさえぎる頭上の日除けが挙げられます。木材の積層が樹冠のように繊細な日陰をつくり出す日除けは、周辺の表面温度を下げる大きな効果があります。屋外で暑さから逃れるには、何よりも日陰に入ることが大切です。
近づくと人感センサーが作動し、日除けの軒先から降り注ぐのは“ウェルカムミスト”。白い水煙のようなミストは、目で見るだけで涼やかさを感じる効果があります。



柱の回りのベンチに座ってみれば、アルミ板の座面がひんやり冷たいことに驚くでしょう。これは座面の裏側に「ペルチェ素子」という電子部品が装着されているから。パソコンのCPU冷却や熱帯魚の水槽の水温を保つためなどによく使われる部品で、異なる金属を合わせた部分に電流を流すと、接合部で熱の吸収・放出が起こるペルチェ効果を利用しています。

ベンチに座ると、柱の中に設置された透明アクリル製エアシリンダーの穴から、超微細なミストがそよ風にのって噴き出してきます。粒径がとても小さいミストなので、体にかかるとひやっとするものの、あっという間に気化してしまい、濡れることはありません。

こうした仕掛けの複合効果で、体感温度が5℃下がるというシミュレーション結果もあるCOOL TREE。その第1号が、2018年7月、千葉県・柏の葉スマートシティの広場に三井不動産により設置されました。真夏の屋外でも人々が快適に憩えるまちのオアシスとして、パブリックスペースを豊かにすることが期待されています。

COOL TREEは木材を積み重ねてボルトで締めているだけなので、組み立て・解体が最短一日ででき、場所を変えて繰り返し利用できます。完全に自立したエネルギーシステムを持っていることも、設置のフレキシビリティーを高めています。

形を六角形にしたのは、敷地の形状に合わせて、複数を自由に組み合わせやすいから。たとえば真っすぐな遊歩道に、六角形の一辺をつなげて、いくつも並んでいるシーンを想像してみてください。連続した日陰をつくりながらも、四角をつなげたときのような単調さがありません。真っすぐに並べるだけでなく、面的に広げていくことも可能な六角形は、さまざまな地形に対応可能です。

様々な場所でリユースされ、古くなり役割を終えたCOOL TREEは、材料である木とスチールのボルトを100%リサイクルできます。木材は破砕して木質チップにし、バイオマス発電の燃料にすることで、カーボンニュートラル目指しています。ライフサイクルを通してエコであることに徹底的にこだわりました。

いろいろな可能性を秘めたCOOL TREE。いずれは太陽光発電を利用し、Wi-Fi&充電ステーションとしても機能するかもしれません。各地のCOOL TREEをつなぐネットワークを構築し、別の場所で涼んでいる人同士が「今、そちらは何℃ですか?」などと、ネットワークを介して交流するのも楽しそうです。
酷暑のまちなかでも人々が快適に過ごせることを願い、日建設計はCOOL TREEによる“涼感のおもてなし”を提案していきます。


[写真]
上から3番目:小野強志 撮影
上から4番目:石島邦彦 撮影