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ザ・リッツ・カールトン京都

2014.02.07

最上階北東角の客室から東山を望む。東山から昇る月を見ることは平安の頃からの京都に伝わる伝統の一つ。#1

2月7日鴨川のほとり、東山三十六峯を一望できる立地に、ザ・リッツ・カールトン京都がオープンしました。
設計を担当させていただきました大谷弘明が設計チームを代表してその想いを語ります。

客室からの眺め。外縁の欄干には、
日本の優れた技術の高さが表れている。#1

文化伝承の地にホテルを建設すること


ザ・リッツ・カールトン京都が立地する鴨川沿いの一帯は、かつて平安貴族たちが東山から昇る月を愛でるために別邸を構えた場所でした。またこの敷地は、桃山時代以来の豪商角倉家が本拠を構え、明治時代になると男爵藤田伝三郎の邸宅となった場所でした。彼らはそれぞれの時代において文化プロデューサー的役割を担っていました。まさにここは京都の中でも特別な文化伝承の地です。
このまたとない敷地を得た積水ハウスの和田勇会長は、国賓を迎える京都迎賓館に対して、ここには「民間の迎賓館」をつくりたいという想いを強く持たれました。
一方、ラグジュアリーホテルの世界的ブランドのひとつであるリッツ・カールトンは、日本の中でも特別な場所に建つ、唯一無二のホテルとなることを求めました。
「日本にはこれほど魅力的なところがあるということ、日本の美は半端なものではないこと、そしてその美の神髄が京都にあること」。訪れるお客様にこれらのことを感じてもらいたいというのが、このホテル建設に携わったすべての関係者の共通の想いでした。設計段階には、経年美化を掲げる積水ハウスの皆様と一緒に、あたかもずっと以前からこの地に建っていたかのようにこの環境に滑り込むデザインを練りました。


伝えたかったのは美しい空気感です


私たち関係者が伝えたかった日本の美のひとつに、清潔で簡潔で凛とした日本の空気感があります。それは、他のリゾート地とは違う空気です。
この空気感は、特に建物の外部と内部にまたがる境界領域に多く表れています。例えば、建物を取り巻く外縁の欄干の細やかさや、コンクリートで作られた薄い軒天井、軒先のちょっとした反りなど、です。これらを微妙な緊張感を保ちつつ構成しています。日本の優れた職工たちが、持てる技を総動員することによって、唯一日本にしかない建築表現をつくり上げています。

化粧ではなく、屋根を支える薄いコンクリートがそのまま軒天となっている。#1

軒先がほんのわずかに反りあがっていることで、全体へ緊張感を与えている。#1

雁行して並んでいる客室。
鴨川に面して大きな1枚ガラスの窓がある。#1

この地にしかない文化を伝える


前述したとおり、ここは、平安貴族が東山から昇る月を愛でるための場所でした。まさに東山の風景は京の文化そのものであったわけです。お客様にも、この地にしかない伝統文化を味わっていただきたい。時とともに表情を変える東山を見ていただきたい。そのために、川に面した長さ130メートルもある建物の地上部分はすべて客室とし、可能な限り大きな一枚ガラス窓を設えました。宴会場やレストラン、プールなどは全部地下階に配置することで、厳しい高さ制限のなかに建物を納めています。
全体を低く抑えたこの建物は、京都らしいヒューマンスケールを保っています。同じ日本でも、東京や大阪にはないスケール感であり、ここにも京都らしさが表れています。

数寄屋の伝統である直線的で緊張感のある外観。川に面して130メートルの間口がある。#2

早朝の風景。#2

夕景。#2

京都の、そして日本を代表するにふさわしいホテル


このホテルを建設したのは著名な工芸家たちというわけではありません。普段は普通の建物に携わっている職人たちや技術者たちばかりです。これらの人達が結集し、日本の美を伝えたいという暗黙の了解のもと、いつもとは違う特別仕立ての空間・空気をつくり上げたのです。「民間の迎賓館」と言うに足るホテルになりました。
設計から工事の全部の段階において、この仕事に関わったすべての人々の苦労は到底語り尽くせないものでした。そして完成させた喜びもたいへん大きなものとなりました。(談:大谷弘明 日建設計執行役員設計部門代表)

屋根の持つ情緒は日本建築にはなくてなならないもの。#1

妻側が非対称のプロポーションになっており、楼閣建築の趣を出している。軒が大きく突き出ているのがわかる。#1

地下フロアのための庭を、地下にほっている。#1

アプローチ。#1

ロビーフロアの吹抜。#1

旧夷川邸(藤田男爵邸)座敷を移築した。#2

主要用途 ホテル・旅館
建 築 主 積水ハウス(株)
構造階数 RC/ SRC 地下3 階、地上4 階
敷地面積 5,937.28 ㎡
建築面積 4,598.23 ㎡
延べ面積 24,682.89 ㎡
工期 2011 年12 月~ 2013 年11 月

#1撮影:金子美由紀(ナカサアンドパートナーズ)
#2撮影:スタジオ・ムライ