ミュージアムタワー京橋における、BIMを活用した統合ファシリティマネジメント
プラットフォームの導入及び運用を支援。建物管理の人材難克服と効率化に挑む。
株式会社日建設計(代表取締役社長:大松 敦、以下「日建設計」)は、「ミュージアムタワー京橋※1」(所在地:東京都中央区京橋一丁目7番2号)に建物維持管理用のBIMを組み入れた統合ファシリティマネジメントプラットフォーム(以下、統合FMプラットフォーム)を構築すべく、2022年より複数企業と共同で建物オーナー及び建物管理者を支援しています。
2024年6月、施設のデータ化が完了し、統合FMプラットフォームを核とした建物維持管理システム(以下、本維持管理システム)の運用が始まりました。これにより、ファシリティマネジメント業務の効率化やアウトソーシングを容易に行うことが可能となります。
本維持管理システムは、オフィス部分の建物オーナーである株式会社永坂産業(代表取締役:髙橋康紀、以下「永坂産業」)と美術館部分の建物オーナーである公益財団法人石橋財団(理事長:石橋寬、以下「石橋財団」)が発注者となり、日建設計をはじめとするプロジェクト参画企業が共同で構築に取り組んだものです。
※1 ミュージアムタワー京橋については後述「ミュージアムタワー京橋について」を参照
2024年6月、施設のデータ化が完了し、統合FMプラットフォームを核とした建物維持管理システム(以下、本維持管理システム)の運用が始まりました。これにより、ファシリティマネジメント業務の効率化やアウトソーシングを容易に行うことが可能となります。
本維持管理システムは、オフィス部分の建物オーナーである株式会社永坂産業(代表取締役:髙橋康紀、以下「永坂産業」)と美術館部分の建物オーナーである公益財団法人石橋財団(理事長:石橋寬、以下「石橋財団」)が発注者となり、日建設計をはじめとするプロジェクト参画企業が共同で構築に取り組んだものです。
※1 ミュージアムタワー京橋については後述「ミュージアムタワー京橋について」を参照
プロジェクト参画企業(法人)とその役割
取組みの経緯
建物オーナーは、従来型の建物管理方式をより効率化したいと考え、三井住友信託銀行株式会社(代表取締役社長:大山 一也)と不動産管理のDX化の検討を進めておられました。その一環で建物管理に維持管理BIMを導入することとなり、ミュージアムタワー京橋の設計者でありBIMの知見も有する日建設計が全面的に技術協力を行うことになりました。まず、日建設計がシステムの要件定義を支援し、統合FMプラットフォームの提供及び維持管理BIMデータ作成を担うパートナー選定を行いました。その結果、統合FMプラットフォームとして株式会社FMシステム(代表取締役社長:柴田 英昭)の「FM-Integration」を選定、維持管理BIMデータの作成はトランスコスモス株式会社(代表取締役共同社長:牟田正明、神谷健志)に委託すること決定し、これら4社が共同でシステム構築に取り組んできました。
そして、2024年6月、建物全体に関するBIMデータのFM-Integrationへの組み込みが完了し、統合FMプラットフォームを活用した運用が始まりました。
今後は、建物運営管理(プロパティマネジメント/ビルマネジメント業務)を担う三井不動産ビルマネジメント株式会社(代表取締役社長:村上 弘)が主体となって本維持管理システムの本格運用を行い、設計・施工にかかる建築情報に加えて、竣工後の管理運営に関する情報を統合FMプラットフォーム上に蓄積しながらLCC(ライフサイクルコスト)の最適化を目指していくこととなります。
そして、2024年6月、建物全体に関するBIMデータのFM-Integrationへの組み込みが完了し、統合FMプラットフォームを活用した運用が始まりました。
今後は、建物運営管理(プロパティマネジメント/ビルマネジメント業務)を担う三井不動産ビルマネジメント株式会社(代表取締役社長:村上 弘)が主体となって本維持管理システムの本格運用を行い、設計・施工にかかる建築情報に加えて、竣工後の管理運営に関する情報を統合FMプラットフォーム上に蓄積しながらLCC(ライフサイクルコスト)の最適化を目指していくこととなります。
BIMを取り巻く社会状況
日本では、人口減少時代を迎える中、労働者の減少を上回って生産性を向上させることで経済成長を実現する「生産性革命」を目指す方策として、BIMの活用が推進されています。様々な場面でBIMを活用することで、生産性の向上、ビッグデータ化、インフラプラットフォームとの連携など、建築物の利用価値の拡大が期待されており、「建築BIM推進会議」(事務局:国土交通省)が2019年6月に設置されたように、BIM活用の動きが官民一体となって加速されています。
これらを受けて確かにBIM活用は進んではいますが、現時点では設計・施工の用途が中心であり、企画や維持管理に積極的に利用されていない現状があります。一方、不動産を所有する企業の施設維持管理部門では、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少に伴う人材難が課題となっています。経験豊かな施設維持管理者がいる間に人材難の克服のための技術継承やファシリティマネジメント業務の効率化が求められていると言えます。
これらを受けて確かにBIM活用は進んではいますが、現時点では設計・施工の用途が中心であり、企画や維持管理に積極的に利用されていない現状があります。一方、不動産を所有する企業の施設維持管理部門では、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少に伴う人材難が課題となっています。経験豊かな施設維持管理者がいる間に人材難の克服のための技術継承やファシリティマネジメント業務の効率化が求められていると言えます。
ミュージアムタワー京橋の統合FMプラットフォームの概要と特長
建物オーナーはオフィスと美術館の複合施設であるミュージアムタワー京橋の建物管理業務の基盤として株式会社FMシステムが提供する「FM-integration」を採用し、維持管理BIMを連携した統合FMプラットフォームによるビルのファシリティマネジメントを実践します。この維持管理BIMは国内最大級のオブジェクト数を有しており、美術館用途での運用は国内初の事例となります。
施設内の無数の設備を3Dオブジェクト化した施工用BIMは、あくまで建設・製造のためのBIMで、維持管理には不向きな重く扱いづらいデータになりがちです。維持管理への活用を想定して、モデル化の費用対効果が大きく見込まれるものを優先して選択し、さらに適切なLOD(詳細度)設定により軽量化した維持管理BIMデータを作成することで、管理者がPCブラウザ上で簡単に扱えるようにしました。それは建物オーナー側(コンサルタントを含む)から詳細なEIR(発注者情報要件)を維持管理BIM作成ベンダーに事前に提示することによって実現されました。このように維持管理BIMの作成時にEIRを提示することはまだ前例が少なく、今回その有用性が実証されました。
なお、統合FMプラットフォームは、例として下記のユースケースを想定しています。
なお、統合FMプラットフォームは、例として下記のユースケースを想定しています。
【ユースケースの一例】
統合FMプラットフォームの活用を通じて…
・モデルの属性情報を活用した資産台帳を構築
・オフィスと美術館の区分所有範囲を、可視化及び精緻化して整理
・修繕・更新の情報等を(部屋・設備)モデルに紐付け管理
統合FMプラットフォームの活用を通じて…
・モデルの属性情報を活用した資産台帳を構築
・オフィスと美術館の区分所有範囲を、可視化及び精緻化して整理
・修繕・更新の情報等を(部屋・設備)モデルに紐付け管理
発注側が主体で取り組んだ統合FMプラットフォーム構築事例
一般的に、統合FMプラットフォームの構築は、設計事務所や施工会社などの建築受注者側から提案するケースが多いため、ミュージアムタワー京橋のように建物オーナー側から依頼を頂戴することはほとんどありませんでした。そこで、統合FMプラットフォームの構築を主体的に依頼するに至った背景について、建物オーナーよりコメントを頂戴しました。
【永坂産業コメント】
「ミュージアムタワー京橋」オフィス部分を保有・運営する上での課題は、建物管理業務の効率化と建物の長期継続使用です。そのソリューションとして「建物維持管理BIM」の活用を決定しました。4万m2 を超える複合用途ビルへの導入はあまり前例を見ない試みではありますが、維持管理コストをミニマイズしつつ当社のみならず協力企業スタッフの業務効率化にもつながる意義ある取り組みであると確信しています。
【石橋財団コメント】
2020年1月、新たに開館した公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館は、施設の長期修繕計画を見据え、安定的かつ効率的な施設管理を実現するために、このたび「建物維持管理BIM」の導入を決定しました。それにより、美術作品の展示に適した環境を24時間、年間を通して保全すること、また来場される皆さまに快適な鑑賞環境を提供し続けること、加えて長期的視野に立ち、ライフサイクルコストの圧縮を図れることにも期待しています。
【永坂産業コメント】
「ミュージアムタワー京橋」オフィス部分を保有・運営する上での課題は、建物管理業務の効率化と建物の長期継続使用です。そのソリューションとして「建物維持管理BIM」の活用を決定しました。4万m2 を超える複合用途ビルへの導入はあまり前例を見ない試みではありますが、維持管理コストをミニマイズしつつ当社のみならず協力企業スタッフの業務効率化にもつながる意義ある取り組みであると確信しています。
【石橋財団コメント】
2020年1月、新たに開館した公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館は、施設の長期修繕計画を見据え、安定的かつ効率的な施設管理を実現するために、このたび「建物維持管理BIM」の導入を決定しました。それにより、美術作品の展示に適した環境を24時間、年間を通して保全すること、また来場される皆さまに快適な鑑賞環境を提供し続けること、加えて長期的視野に立ち、ライフサイクルコストの圧縮を図れることにも期待しています。
今後の展開
日建設計は、建物オーナーからの要請に基づき、6月の稼働開始以降、日常点検、中央監視、建物診断、修繕計画、リーシングなどのファシリティマネジメント業務における、統合FMプラットフォームの活用成果をシステムにフィードバックすることで、ユースケースに合わせた操作性の向上、カスタマイズ機能の開発、運用マニュアルの作成などを行ってまいります。また、今後は施設のスマートビル化を支援するデジタルツインプラットフォームやXRサービスなど他システムとの連携も視野に、BIMをフル活用した様々なサービスの開発も同時に目指します。
デジタルツインプラットフォームに関しては、Autodesk Tandem®※2を活用して、BIMデータとIoTデータを連携した、室内環境可視化の試行を開始しています。将来のBIMを活用したサービスを加速させる好事例となるべく、さらなる開発や運用実績の積み上げを行います。
デジタルツインプラットフォームに関しては、Autodesk Tandem®※2を活用して、BIMデータとIoTデータを連携した、室内環境可視化の試行を開始しています。将来のBIMを活用したサービスを加速させる好事例となるべく、さらなる開発や運用実績の積み上げを行います。
ミュージアムタワー京橋について
永坂産業と石橋財団が区分所有する事務所と美術館の複合施設です。永坂産業が所有管理する高層部(10階以上)はオフィス専有部分、石橋財団が所有管理する低層部(7階以下)はアーティゾン美術館の専有部分になっており、この2つの専有部分以外の共用部部分を管理運営する組織として2019年に「ミュージアムタワー京橋管理組合」を設立しています。
所在地 | 東京都中央区京橋一丁目7番2号 |
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構造 | 鉄骨造/一部鉄筋コンクリート造/免震構造 |
規模 | 地上23階/地下2階 |
延床面積 | 41,829.51m2(12,653.43坪) |
竣工 | 2019年7月 |
事業主 | 株式会社永坂産業/公益財団法人石橋財団 |
設計 | 株式会社日建設計 |
施工 | 戸田建設株式会社 |
株式会社日建設計について
日建設計は、建築の設計監理、都市デザインおよびこれらに関連する調査・企画・コンサルティング業務を⾏うプロフェッショナル・サービス・ファームです。1900年の創業以来120年にわたって、社会の要請とクライアントの皆様の様々なご要望にお応えすべく、顕在的・潜在的な社会課題に対して解決を図る「社会環境デザイン」を通じた価値創造に取り組んできました。これまで⽇本、中国、ASEAN、中東でさまざまなプロジェクトに携わり、近年はインド、欧州にも展開しています。2021年3月には、脱炭素社会への取り組みに向けた「気候非常事態宣言」を宣言しました。
株式会社永坂産業について
株式会社永坂産業は、株式会社ブリヂストンの創業者である石橋正二郎が当時のブリヂストンタイヤ株式会社の株式を公開するのに先立ち、同社の不動産経営などを分離継承する目的で設立した会社です。1960(昭和35)年1月28日に石橋不動産株式会社として創立され、1991年12月に現在の商号である株式会社永坂産業に改称されました。永坂産業の社名は、創立当時の本社所在地であった東京都港区麻布永坂町という地名から名付けられました。
公益財団法人石橋財団について
石橋財団は1956年、創設者石橋正二郎による芸術・文化への貢献を永続的なものとするために設立されました。以来、東京・京橋のアーティゾン美術館を中心とした美術館事業と、芸術・文化・教育活動を支援する寄付助成事業を二本の柱として活動を続けています。従来、社会的課題に取り組んできましたが、改めてSDGsを重要な目標とし、文化財保護や教育普及を実現するとともに、気候変動への対応や地球環境の保全への支援などを行ってまいります。
三井住友信託銀行株式会社について
創業100年を迎える三井住友信託銀行。
特に不動産事業は、創業以来、住宅供給・不動産証券化・ESG戦略推進等、各時代の社会課題に対応し、先駆的なソリューションを提供してきました。「信託の力で、新たな価値を創造し、お客さまや社会の豊かな未来を花開かせる」をパーパスに、これからも高度な専門性と総合力によりお客さまのベストパートナーとして、また不動産投資・流通市場を支えるエッセンシャルな存在として、次の100年も社会に貢献します。
特に不動産事業は、創業以来、住宅供給・不動産証券化・ESG戦略推進等、各時代の社会課題に対応し、先駆的なソリューションを提供してきました。「信託の力で、新たな価値を創造し、お客さまや社会の豊かな未来を花開かせる」をパーパスに、これからも高度な専門性と総合力によりお客さまのベストパートナーとして、また不動産投資・流通市場を支えるエッセンシャルな存在として、次の100年も社会に貢献します。
株式会社FMシステムについて
FMシステムはファシリティマネジメント(FM:建物や施設の運営・管理)に関するプログラムを開発しています。お客様が保有・管理している建物や施設のデータベースを作成し、現状分析、メンテナンスの計画策定、資産活用の経営戦略企画などを支援する情報システムを構築します。また、FM関連の開発実績により、図面や画像、文書などの情報共有の技術を応用した情報管理プログラムも提供し、幅広い業種の方々にご利用いただいています。特にBIM製品と連携したソリューション実績では、BIMモデルとのデータ連携を実現し、FMに関連した新しいビジネス展開を支援しています。
トランスコスモス株式会社について 建設業向けサービスについて
トランスコスモスは1966年の創業以来、優れた「人」と最新の「技術力」を融合し、より価値の高いサービスを提供することで、お客様企業の競争力強化に努めてまいりました。現在では、お客様企業のビジネスプロセスをコスト最適化と売上拡大の両面から支援するサービスを、アジアを中心に世界35の国と地域・181の拠点で展開しています。今回提供しているアーバンソリューションサービスは、ビルディング、インフラ、ハウジング、ファシリティなど、建設業に特化したサービスとして、建設DXが進む業界において、ツールやシステムの導入から、導入後の現場における定着促進まで対応した循環型のサービスを提供しています。DXから生まれる各情報のデータを活用し、お客様企業のビジネス変革を支援しています。トランスコスモスは事業環境の変化に対応し、デジタル技術の活用でお客様企業の変革を支援する「Global Digital Transformation Partner」を目指しています。
三井不動産ビルマネジメント株式会社について
三井不動産ビルマネジメント株式会社は、三井不動産グループのオフィスビル事業の中核を担う会社として、ビルのプロパティマネジメントを中心にテナント企業や地域・社会に対するさまざまな付加価値の提供を行っています。社会・経済環境の変化とともに、「働き方」が多様化し、オフィスは単に働く「場所(スペース)」ではなく、創造的で革新的な価値を生み出す「場面(シーン)」になっていくと捉えています。当社は、「オフィス」「働き方」の新たな在り方をつくっていく「Only One 企業」としての強い覚悟意志をもって「ビジネスシーンの明日を変えていく」ことに挑戦し、さらなる進化を続けてまいります。
本件に関するお問い合わせ先
株式会社日建設計 広報室 飛田 Tel. 03-5226-3030(代表) e-mail:webmaster@nikken.jp