つくればつくるほど環境に優しい「つな木」
~変幻自在の木材ユニットが森を守る~

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都市の公園でも山間地のキャンプ場でも、あらゆる場所に出現し、「場」と「コト」をつくり、「ヒト」をつなぐ「つな木」プロジェクト。ホームセンターなどで手軽に入手できる小径の材木を使って、だれもが簡単に組み立て・解体・移設できるユニットを普及させることで、木材利用の推進、森林資源の循環、国土保全に貢献することを目指しています。

ライフスタイルの変化を促し、森林資源の循環へ

日本は国土面積の3分の2を森林が覆う森林大国で、戦後に植林された人工林が利用時期を迎えています。いっぽう、木材価格の下落により林業が衰退し、森林の多面的な機能低下や保全が社会の課題になっています。木材活用の施策として「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が制定され、大規模木造も百花繚乱の時代を迎えました。日建設計は、「有明体操競技場」などで、木材を使った新しい建築デザインに取り組んでいます。
大規模木造だけでなく「木材の利用推進は、ユーザーを拡大することが大事」と始まったのが「つな木」プロジェクトなのです。

仕組みはきわめてシンプルなもの。材料は、一般に流通している90mm角や105mm角 の無垢材と、クランプと呼ばれる接合部材、そして移動用の車輪だけ。木は軽いため女性でも無理なく持て、大人2人いれば30分程度で基本ユニットを組み立てることができます。季節に合わせたカバー素材を加えれば、寒暖にも対応ができます。夏なら通気性のよい布地、冬は断熱性能の高い梱包用の気泡緩衝材「プチプチ」など、好みのデザインを施すことができます。

利用方法も、ベンチやプランタ、カフェやショップ、ときにはオフィスなど、変幻自在です。同じ部材を使って、必要に応じて別の機能へと転換できるのが大きな特徴です。木材が経年劣化した後は、バイオマス燃料などエネルギーとして循環も可能。さらに室内でも屋外でも利用できるなど、利用方法のアイデアがユーザーに開かれ多様なのが、つな木の大きな魅力です。人びとのライフスタイルに寄り添いながら、木材利用を促します。

組織力いかした社会実験と研究・開発で、実現へ

日建設計の新規ビジネス・パイロット・プロジェクトとして、「つな木」は2018年の社内コンペ「Discover Peaks Competition」で選ばれました。提案者らが自主的な組織「Nikken Wood Lab」を結成し、現在は実用化に向けて、部材の研究・開発を進めています。

また、実際の都市空間を利用したイベント「OUT DOOR LOUNGE」を2019年秋に開催。社内の都市部門で公共空間のデザインから運営まで手掛けるパブリックアセットラボと協力し、社屋の前にある公開空地を利用した社会実験です。周辺の店舗が飲食ブースを出店するなど、3週間の賑わいの場をつくりだしました。

つな木は、設営・撤収が容易で、短期間で行うイベントとの相性がよいのが大きな特徴です。こうしたイベントを通じて、社会のニーズを把握し、ビジネスとしての可能性を探っていきます。

さらに、より機能性を高めるための研究・開発も会社の組織力を生かして展開中です。目下の目標は、より木造らしいジョイント部分を開発すること。現在使用しているクランプは、もともと鋼材用につくられたもので、重量が約2kgと重いこと、寸法が 流通している材木の規格に合っていないことなどから、3Dプリンタを使った樹脂製などを検討中です。3Dモデリングや精緻な構造計算など、Wood Labは組織設計事務所の多様な専門性を生かして活動しています。

「『つくればつくるほど生命にとって良い建築』を学生時代から目指していました」と、Wood Lab代表の大庭拓也(設計部アソシエイト)は設計者としての原点を語ります。実務では大規模木造を担当しつつ、Wood Labを起点に小径木を用いたこれまでにない「コト」を生み出す「場」づくりに尽力しています。個人の建築への想いからはじまった「つな木」が、組織の中で育まれされ、社会に実装され身近な場所で見られる日が近いことを願っています。

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