木材を使った社会課題解決の学生アイデアコンペ「第1回つなぎコンペ」結果発表
〜「奈良の鹿による食害」「新潟の豪雪地帯における人工林放置」「コンクリート擁壁の木質化」をテーマとした3作品が優秀賞に〜
株式会社日建設計(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:大松敦)は、ArchiTech株式会社(本社:京都府京都市、代表取締役:伊藤拓也)と「第1回つなぎコンペ『もち(森+街)をつくる』」を開催し、優秀賞3点を決定しましたのでお知らせします。
木材の積極的利用を目指す つなぎコンペ『もち(森+街)をつくる』」開催背景
国土の3分の2が森林で覆われている日本では、戦後に植林された人工林が切りどきを迎えており、森林資源の循環や国土保全の観点から、国産木材の適切な利用が求められています。10月1日には脱炭素社会の実現に向け、建築物一般で木材利用を促進する改正木材利用促進法が施行されたほか、10月が「木材利用促進月間」として定められました。
持続可能な森林循環や木材利用を進めるには、“どこでどのように木材を活用するか”という観点が重要です。そこで今回、日建設計 Nikken Wood Labが木材利用の裾野を広げるアクションとして発案した木質ユニット「つな木」を用い、森(もり)と街(まち)がつながり、相互が一緒になって課題を共有し、行動に繋げていく『もち』の視点に立った学生視点のアイデアを募集し、実現に向けた取り組みを協働・支援するため、本コンペを企画しました。
持続可能な森林循環や木材利用を進めるには、“どこでどのように木材を活用するか”という観点が重要です。そこで今回、日建設計 Nikken Wood Labが木材利用の裾野を広げるアクションとして発案した木質ユニット「つな木」を用い、森(もり)と街(まち)がつながり、相互が一緒になって課題を共有し、行動に繋げていく『もち』の視点に立った学生視点のアイデアを募集し、実現に向けた取り組みを協働・支援するため、本コンペを企画しました。
「つな木」について
「つな木」は、45mm角の一般流通木材と接合金物の組み合わせにより、家具から少し大きめの空間を「全国 どこでも だれでも」つくることができ、同じ部材を組み換えることで様々な形や機能にトランスフォームできるシステム。本コンペでは「つな木」のシステムを用いた社会課題の解決や空間デザイン・用途に関連するアイデアを広く募集し、優秀賞作品は審査員と共にその実現に向けた議論を実際に進める。
日建設計は、社会環境デザインの先端を拓き、豊かな体験を社会や人々へ届ける専門家集団です。本コンペから生まれる様々なアイデアや出会いが、森林への関心の喚起、林業・木材産業の担い手育成につながり、『もち』に関わる共創人口がますます増えていく社会を目指します。
優秀賞作品
1.「子守木 森の大木が街の幼木を守る」※奈良県立奈良公園の樹木を対象とした取り組み
受賞者コメント:
この度は、優秀賞をいただきありがとうございます。私たちが提案した「子守木」が、街の中に実現することをほんとに嬉しく思います。また、学生の間にこのような実現の機会をいただけたことに感謝しまして、たくさんのことを学びながら精一杯頑張りたいと思います。
「子守木」が街に増えていくことで、街の小さな木が、森の木と人の手を借りながら健康に育ち、やがて大きな木となって人の憩いの場となり、街ににぎわいを生む、そんな豊かな緑と活気に溢れた街になっていくことを期待して「子守木」を実現させていきたいです。
「子守木」が街に増えていくことで、街の小さな木が、森の木と人の手を借りながら健康に育ち、やがて大きな木となって人の憩いの場となり、街ににぎわいを生む、そんな豊かな緑と活気に溢れた街になっていくことを期待して「子守木」を実現させていきたいです。
審査員講評(株式会社小友木材店 代表取締役 小友康広):
タイトルとなっているコンセプトをしっかり守りながら「奈良の鹿被害」という地域課題を解決するためのつなぎを利用したプロダクトデザインを提案しただけではなく「守っている幼木を育てていくためにはどうするか?」という育成方法や「地域の人たちが街路樹を愛おしむ仕掛けを作っていく」「しっかり大きく育った時にも組み替えることで簡単にフィットできる」というつな木の利点を活かした非常に優れた案だと思いました。
立派な金属製の支柱を建てるより安価なのはほぼ確実でしょうから採用する側にコストメリットがある提案も出来ると思います。まずは奈良での実現を支援していきたいと思っております。その後、全国の街路樹や公園などの樹木の課題を把握し、それに対応した子守木のデザインを作っていくことでどんどんと広がっていくイメージも出来ます。
私が花巻おもちゃ美術館という体験型木育施設を経営している立場もあり全国のおもちゃ美術館ネットワーク(2023年には13館になる予定)を通じておもちゃ美術館の敷地や近くにある街路樹などをこの子守木で守っていくようなワークショップを地域の子供、来館者たちともやっていけると思います。
近い将来「自分たちの地域の木は子守木(つなぎ)で守っていく」が日本の新たなスタンダードになれるように願っておりますし、協力してまいります。
立派な金属製の支柱を建てるより安価なのはほぼ確実でしょうから採用する側にコストメリットがある提案も出来ると思います。まずは奈良での実現を支援していきたいと思っております。その後、全国の街路樹や公園などの樹木の課題を把握し、それに対応した子守木のデザインを作っていくことでどんどんと広がっていくイメージも出来ます。
私が花巻おもちゃ美術館という体験型木育施設を経営している立場もあり全国のおもちゃ美術館ネットワーク(2023年には13館になる予定)を通じておもちゃ美術館の敷地や近くにある街路樹などをこの子守木で守っていくようなワークショップを地域の子供、来館者たちともやっていけると思います。
近い将来「自分たちの地域の木は子守木(つなぎ)で守っていく」が日本の新たなスタンダードになれるように願っておりますし、協力してまいります。
2.「土と木で編むまちかど擁壁」
受賞者コメント:
この度は光栄な賞をいただき、ありがとうございました。私達は普段都市空間の研究をしているため、都市を舞台にしながらも森山までを射程に入れた横断的なアイデアを提示したいと考え、コンペに臨みました。土木という共通する言語を見つけることができ、つな木の特徴を活かした新しいモデルの提案につながって良かったと感じています。
審査員の皆様からも現実的なクリティークや可能性を評価するコメントをいただき、心より感謝申し上げます。構法や構造などのブラッシュアップを重ね、実現性を高めていきたいと考えています。他の作品などからも森や林業、木材について幅広く学びを得ることができ、参加しているだけでも楽しめるコンペでした。ありがとうございました。
審査員の皆様からも現実的なクリティークや可能性を評価するコメントをいただき、心より感謝申し上げます。構法や構造などのブラッシュアップを重ね、実現性を高めていきたいと考えています。他の作品などからも森や林業、木材について幅広く学びを得ることができ、参加しているだけでも楽しめるコンペでした。ありがとうございました。
審査員講評(澤秀俊設計環境 / SAWADEE 代表, NPO法人 活エネルギーアカデミー事務局 澤秀俊):
この提案は日本全国津々浦々で見られる人工的で無機質な土木景観を、自然により近い「柔らかな土木」に更新していける大きな可能性を秘めていると思います。街の中では、公園や住宅街など高低差があるところはいたる所にありますし、山間部の道路沿いは大小様々な土留めや法面で構成されています。まずは、小さな高低差から実験・実践していき、ゆくゆくは本格的な土木工事でも使用できるようなものに発展できれば非常に画期的だと思います。
また、林業の現場から木材物流の道筋を整えればたくさんの材が使用でき、森林資源の利活用という意味でも有効な出口となり得ます。製材を採った残りを挽き板として用いて、下地の土留めとすることで、丸太一本を余すことなく活用することも可能でしょう。森と街をつなぐまちかど擁壁の可能性を、皆さんと共に知恵を出し合って実現していきたいと思います。
また、林業の現場から木材物流の道筋を整えればたくさんの材が使用でき、森林資源の利活用という意味でも有効な出口となり得ます。製材を採った残りを挽き板として用いて、下地の土留めとすることで、丸太一本を余すことなく活用することも可能でしょう。森と街をつなぐまちかど擁壁の可能性を、皆さんと共に知恵を出し合って実現していきたいと思います。
3.「ねあける、森」 ※新潟県南魚沼市・巻機山麓の人工林を対象とした取り組み
受賞者コメント:
この度はこのような素晴らしい賞を頂き、誠にありがとうございました。本コンペの参加にあたり、森林の抱える問題を知り、向き合うきっかけを得ることができました。建築に留まらず、違う分野の学問に触れられただけでも非常に有意義でしたが、提案に共感してくださり、実現に向けて後押ししていただける機会を得られたことを、なにより嬉しく思います。
私の提案は、他の方の提案と比べても実現可能性という面で非常に様々な人の協力が必要になりますし、専門家の方の声を聞きながら今後さらに磨いていく必要があります。一人だけでは絶対に実現できないことです。長く時間がかかっても、森が人を助けるように人が森を助けるような、街へ遊びに行くように森へ遊びに行けるような、そんな未来のきっかけの一つを作れるよう、今後とも精進していく所存です。最後に、ご尽力頂いた審査員の先生方、運営の皆様には心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
私の提案は、他の方の提案と比べても実現可能性という面で非常に様々な人の協力が必要になりますし、専門家の方の声を聞きながら今後さらに磨いていく必要があります。一人だけでは絶対に実現できないことです。長く時間がかかっても、森が人を助けるように人が森を助けるような、街へ遊びに行くように森へ遊びに行けるような、そんな未来のきっかけの一つを作れるよう、今後とも精進していく所存です。最後に、ご尽力頂いた審査員の先生方、運営の皆様には心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
審査員講評(株式会社やまとわ/取締役 奥田 悠史):
森と私たちの暮らしには長い歴史がありますが、いまだに森のことや木々のこと、また森と暮らしが支え合う方法については、研究が必要であったり、わかっていないこともたくさんあります。
今回の提案「ねあける、森」では、森の現状を観察し、森に人が足を踏み入れるきっかけをつくるものとなると思います。これから、実践や実現に向けて、小さくてもトライして、森のことを少しでも理解する場づくりにつなげていければ、と思います。
今回の提案「ねあける、森」では、森の現状を観察し、森に人が足を踏み入れるきっかけをつくるものとなると思います。これから、実践や実現に向けて、小さくてもトライして、森のことを少しでも理解する場づくりにつなげていければ、と思います。
その他の受賞作品
<審査員特別賞> | |
・ | 「Hugging Wall −森・街・工事現場を繋ぎ包み込む、つな木の仮囲い−」 東京大学大学院1年 杉本莉菜, 岡本典子 |
・ | 「木と、ととのう。〜木材乾燥×サウナで流通をデザインする〜」 日本大学4年 奥平康祐, 小林芽衣菜 |
<つなぎ賞> | |
・ | 「Re:Create Garage 〜まちと森をつなぐ原点を〜」 東海大学4年 岩田明紘, 大星史人, 菅谷有祐, 大形一誠 |
・ | 「想い、想われ。」 芝浦工業大学大学院1年 溝口元基, 葛西由樹, 松戸玲奈, 田中美宇, 田村悠真, 菅井陽介, 福庭仁美 |
・ | 「つな木で記す家のライフログ」 芝浦工業大学大学院1年 北川卓人, 豊崎直樹, 吉田舜, 米延美咲, 吉村颯人, 武藤綺羅, 長谷川裕也 |
・ | 「木織町」 東京藝術大学大学院1年 張遥, ヨウシヨウ |
・ | 「循環の暦」 法政大学大学院1年 柏木航, 矢田瑛己 |
・ | 「つくえつなぎ」 昭和女子大学3年 渡部香奈 |
・ | 「あとつなぎ -つな木によるもりとまちのあとつぎ-」 九州大学大学院1年 井本圭亮, 遠藤瑞帆 |
「第1回つなぎコンペ」概要
運営 | : | 主催 つなぎコンペ実行委員会(株式会社日建設計・ArchiTech株式会社) 後援 林野庁、日本木材青壮年団体連合会 協力 武蔵野大学専任講師 太田裕通 |
---|---|---|
審査員 | : | <審査員> 小友 康広 (株式会社小友木材店 代表取締役) 奥田 悠史 (株式会社やまとわ/取締役) 澤 秀俊 (澤秀俊設計環境 / SAWADEE 代表, NPO法人 活エネルギーアカデミー事務局) 長野 麻子 (NPOものづくり生命文明機構常任幹事, 前林野庁木材利用課長) 山梨 知彦 (株式会社日建設計 チーフデザインオフィサー, 常務執行役員) <コーディネーター> 大庭 拓也 (株式会社日建設計 Nikken Wood Lab ラボリーダー) |
応募資格 | : | 2021年4月1日時点で大学、大学院、短期大学、高等専門学校、専修学校(各種学校)、高等学校等の学生 |
ArchiTechについて
ArchiTechは、『愛される建築が生み出され続ける世界を実現する』ことをミッションに掲げ、代表の伊藤拓也が京都大学工学部建築学科を卒業後、同大学院休学中に設立した建築系スタートアップです。このミッションのもと、建築学生向けサービスBEAVER(ビーバー)、建築学生と建築系企業のマッチングサービスBEAVER CAREER(ビーバーキャリア)、建築CGイメージや3Dモデルの制作を行うTHE PERS(ザ・パース)等の事業活動のほか、デザイン評価の可視・定量化に関する京都大学の共同研究事業を行っています。
日建設計について
⽇建設計は、建築の設計監理、都市デザインおよびこれらに関連する調査・企画・コンサルティング業務を⾏うプロフェッショナル・サービス・ファームです。「価値ある仕事によって社会に貢献する」という基本理念を尊重し、1900 年の創業以来、120 年にわたって、社会の要請とクライアントの皆様の様々なご要望にお応えすべく、よりよい社会環境づくりに取り組んできました。これまで⽇本、中国、ASEAN、中東でさまざまなプロジェクトに携わり、近年はインド、ロシア、欧州にも展開しています。
日建設計 Nikken Wood Labについて
日建設計の新規ビジネス・パイロット・プロジェクト(社内ベンチャーコンペ)をきっかけに、設計ビジネス以外の領域へのチャレンジとして木材利用を促進するために2018年にスタートしたのがNikken Wood Labです。木造建築に取り組むことはもちろん、建物では使えない部材を使ったプロダクトの開発や、地域とのつながりを大切にした材料の使い方などを考え、カタチにしていくことに取り組んでいます。
Wood Lab代表:大庭拓也(新領域開拓部門イノベーションデザイングループ)
Wood Lab代表:大庭拓也(新領域開拓部門イノベーションデザイングループ)
本件に関するお問い合わせ先
株式会社日建設計 広報室 Tel. 03-5226-3030(代表)e-mail:webmaster@nikken. jp