美術館の歴史
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では、美術が芸術として認識されたのは何時か、それはおそらくルネッサンスの時代であり、ウフィツィ美術館が16世紀に設立されたことからもうかがわれます。ただし、当時の美術館は宝物庫としての役割が主で、現代の定義における美術館にはまだ至っていません。
このころから、絵画や彫刻が教会や建物の装飾から独立した美術品として評価されるようになったと考えられます。その証として、絵画は額縁に入り、彫刻は台座の上に設置され、流通するようになりました。
その後、美術品の評価の高まりに合わせて、先述のルーブル美術館を皮切りに、数多の美術館が世界に登場していきます。
ナショナルギャラリー(ロンドン)、アムステルダム国立美術館、エルミタージュ美術館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館、MOMA、グッゲンハイム美術館・・・。
美術館建築は、かつての宮殿などを利用したものから、美術館専用の建物として建てられるようになり、しばらく、美術と美術館の関係は蜜月の時代が続きます。
つまり、美術館は美術品を展示する館(宮殿)であり、美術品は美術館に展示されることで権威づけられ、美術界の中でその位置づけを確固たるものとして流通していきました。
絵画・彫刻から始まった美術は、印象派以降、常にこれまでの美術という概念、価値観へのアンチテーゼとして新しい表現が生みだし、その概念自体も美術として取り込むという手続きを繰り返して美術という概念を拡大しています。
キュビズム、シュールレアリスム、抽象表現、ネオ・ダダ、ポップ・アート、ミニマル・アート、コンセプチャル・アート。
これらの様々な表現を受け入れる空間として、美術館もやがて白い大きな箱としてそのスタイルを定着させたかに見えました。
しかし、ランド・アートやインスタレーションなど、美術は美術館を飛び出して、さらに概念を拡げています。さらに、21世紀になりインターネットが普及し、バーチャルな世界が加わることで、美術はますます変貌を遂げつつあります。
その時美術館はどんな姿になっているのか、美術館建築は今も進化を続けています。
美術館の光環境
自然光を取り入れた美術館
光ファイバーによる美術館
LEDによる美術館
美術館の空調
美術館の空調環境においては、作品の保存の観点から、温度と湿度を一定に保つことが重要です。収蔵する作品によっても異なりますが、UNESCOでは、温度16~24℃相対湿度45~63%と規定されています。ASHRAE(アメリカ空調学会)の基準では温度18.5~22.2℃、相対湿度50~55%とさらに厳しいものになっています。 さらに加えて、急激な温度や湿度の変化を抑制することが重要です。急激な温度の変化は美術品の素材を収縮させ、ひび割れや劣化の原因となるだけでなく、相対湿度を変化させますので結露等の要因ともなります。 よって、空調システムの選定や空調機の能力の設定には、十分な専門的検討が必要です。 また、空調機の能力の設定もさることながら、空調機の吹き出しの位置と風速にも注意が必要です。空調機からの気流が美術品に当たると、美術品の劣化の原因となります。 空調の吹き出し温度を室温とあまり大きく差を付けず、かつ、ゆっくりとした風速で空調することが重要です。 また、新たな取り組みとして、千葉市土気に建つ「ホキ美術館」では、放射冷暖房と最小限の風量による空調を組み合わせた空調システムが採用されています。ここでは鉄板製の天井内をチャンバー(ダクト)として空調空気を吹き出すことで、天井の面自体が冷やされ或いは温められ、放射冷暖房として機能するものです。 このシステムの採用に当たっては、BIMによる気流解析などでその効果を十二分に検討し、空調機から吹き出す風量・風速を抑え、絵画に当たる気流を最小とすることと快適な鑑賞空間を実現しながら、省エネルギーにも寄与しています。
このように美術館建築は、新たな技術とともに、変化してきました。今後も、技術を積極的に取り入れ、建築デザインと融合させていくことで、人々の豊かな生活文化の向上のために貢献できるものと考えています。