学生にも、地域にも、“居心地の良い場所”であること

学校法人 城西大学:東京紀尾井町キャンパス 3号棟

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「シンプルに言うと“居心地の良い場所”を創りたかった、ということです。」と、設計担当者の渡辺は振り返る。城西大学の東京紀尾井町キャンパス3号棟プロジェクト(東京都千代田区)。それは学生にだけではなく、みんなにとって“居心地の良い場所”の探求だった。

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めざしたのは『居心地の良さ』

建築設計の分野では、“女性的な視点”というものは住宅や福祉施設のような建物に多く取り入れられてきました。しかし最近では一般建築においても、女性ならではのきめ細やかな配慮や、生活者の視点が求められるようになってきています。

本プロジェクトは、当社としては女性比率の高いチーム編成で進行しました。女子学生が多いキャンパスであることもあり、私たちのチームでまず共有したことは、クライアントからも望まれていたとおり学生にも保護者の方にも安心して楽しんでいただける空間の大学であることを感じていただけるようにしようということでした。建築専門家に高く評価される空間である先鋭性よりも、利用する一般の方々にわかりやすく『居心地の良さ』を感じていただくことを優先しました。

細かなところにこそチームの特長を

新しいキャンパスを利用する学生たちには、教室間をただ行き来するだけではなくキャンパスで少しでも長い時間を過ごして欲しい、キャンパスに愛着を感じて欲しい、キャンパスを利用して学生らしい経験を積み重ねてほしいと思いました。そのため、建物全体に優しさ、親しみやすさ、柔らかさ、楽しさ、そして少しの可愛らしさを盛り込みました。

廊下沿いの柱と柱の間の教授や友達と座って話せるスペース、ハート型の葉が目線の高さで見られる出入りの自由なテラス、イベントをしたりみんなで腰掛けることのできる大階段など。さらには、安心感のある角の丸い柱や、親しみやすさと可愛らしさを取り入れたサイン表示、柔らかな雰囲気をつくる木漏れ日の射す採光などの工夫を重ねました。

こうしたちょっとしたところ、細やかなところが気になるのは、女性チームならではの感覚のように感じます。

『居心地の良さ』は、周辺のみなさまにも

『居心地の良さ』を追求していくうちに、改めて気付いたことがあります。それは、利用者としての目線と同時に、周囲にお住まいのみなさまから見ても『居心地の良い』ものでなくてはならないということです。周辺にお住まいの方との視線避けにもなるように、ガラスチューブを利用した壁をつくり威圧感を排除しています。

このプロジェクトは“あ・うんの呼吸”で進む瞬間がいくつもありました。女性中心のチームであったことも幸いしたのか、語らずともアイデアやイメージを共有できたシーンが多かったように感じています。

[写真:雁光舎(野田東徳)]

  • 中本 太郎

    中本 太郎

    設計監理部門
    設計グループ
    シニアダイレクター

    1991年、東京藝術大学修士課程を経て、日建設計に入社。
    専門は建築意匠設計。
    美術館から学校、商業、超高層まで、幅広い分野で、国内外に存在感のある建物を数多く手掛けている。
    主なプロジェクトは、コナミスーパーキャンパス(2007)、ホキ美術館(2011)、城西大学紀尾井町キャンパス(2013)、東京藝術大学第6ホール(2014)、東急プラザ銀座(2016)、ミュージアムタワー京橋(2019)、釜山ユーラシアプラットフォーム(2019)、仁川新国際フェリーターミナル(2020)、など
    一級建築士、日本建築家協会会員、日本建築学会会員。

  • 渡辺 由紀

    渡辺 由紀

    設計監理部門
    設計グループ
    ダイレクター

    1994年、東京大学工学部建築学科を卒業後、日建設計に入社。1児の母。専門は建築意匠設計。
    担当建物用途は多岐にわたり、高根町立しらかば保育園(2001)、泉屋博古館(2002)、ロックビレイビル(2004)、シティタワー札幌大通(2007)、出産復職以降、城西大学東京紀尾井町キャンパス3号棟(2013)、ヤマト港南ビル(2019)、ホテルメトロポリタン鎌倉(2020)、SMBC成城ビル(2020)、SMBC新橋ビル(2020)等を担当。
    求められる与件を満たした上で、いかなる用途でもその建築が人や風景を引立て優しく寄り添う存在になっているか、その建築にまつわる人や組織や地域社会に対して善意に満ちた計画になっているか、という視点を大切に設計している。

  • 長尾 美菜未

    長尾 美菜未

    設計監理部門
    アソシエイト

    2007年宮城大学卒業後、日建設計入社。専門は建築意匠設計。オフィス、工場、集合住宅、空港、宿泊施設などのプロジェクトを幅広く経験し、2013年に城西大学東京紀尾井町キャンパス3号棟の竣工後、休職し、イギリスとスイスへ留学。2014年スイス連邦工科大学チューリッヒ校MAS修士課程修了。スイス連邦工科大学チューリッヒ校客員研究員を経て、2016年より日建設計に復職。

  • 宮坂 裕美子

    宮坂 裕美子

    執行役員
    エンジニアリング部門
    設備設計グループ代表

    1995年早稲田大学修士課程を経て、日建設計に入社。専門は機械設備設計。これまで教育、医療、スポーツ他、様々な用途のプロジェクトを担当する。立教大学ロイドホール(2012)、明治大学駿河台キャンパス グローバルフロント(2013)、トラスコフィオリートビル(2014)、愛育病院(2014)、国立西洋美術館空調改修(2015)、有明体操競技場(2019)、大阪万博日本館など。建物竣工後の運用段階における検証が重要であるため、施主(ユーザー)とのコミュニケーションを大事にしたいと考えている。
    設備設計一級建築士、空気調和・衛生工学会、建築設備技術者協会会員、設備女子会会長

  • 井田 茉利

    井田 茉利

    エンジニアリング部門 構造設計グループ

    2008年、東京工業大学修士課程を経て、日建設計に入社。専門は建築構造設計。入社以来、物流倉庫、ホール、病院、超高層オフィス、大学など様々な建物の構造設計を担当。最近では、桐朋学園大学音楽学部調布キャンパス1号館にて、日本コンクリート工学会賞を受賞。設計は、無から有を生む行為。意匠設計者には空間への思いをたくさん語ってほしい。そして、構造設計者は、構造的合理性を加えてその思いを読み解き、よい空間を一緒に実現して行きたいと考えている。構造設計一級建築士。

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