+αの付加価値を提供する
「エースホテル京都」

Scroll Down

ライフスタイルが多種多様であるように、現在、ホテルにも様々なスタイルを持ったホテルが存在します。
「エースホテル」は、既存建物を活用し、地域との共生を目指す独自のコンセプトにより、世界中に多くのファンを持つホテルブランドであり、「エースホテル京都」プロジェクトはそのアジア初出店です。日建設計は多様な関係者と調整を重ねつつ、個性あるホテルコンセプトの実現に向けてPMとして尽力してきました。
※トップ写真:エントランスロビー©Forward Stroke inc.

CATEGORY

個性あるデザイン実現に向けての粘り強いマネジメント

「エースホテル京都」は歴史的建築物である旧京都中央電話局の一部を保存・改修した複合施設「新風館」 の中にあります。
アメリカを本拠地とした「エースホテル」は、立地ごとの特徴を取り入れたデザインと地域社会との協業により、新たな文化の発信と地域活性化を目指したホテルブランドとして知られています。そのコンセプトを表すように、「エースホテル京都」の1階ロビーは、誰もが気軽に滞在し、利用できるような設えになっています。施設全体は、地域文化を大切にするエースホテルらしく、和と洋、古さと新しさ、アートと建築など、京都的な要素との様々な融合による、ユニークなデザインで構成されています。

烏丸御池通りからの全景。前方が旧館・後方が新館 ⓒForward Stroke inc.

これらのデザインは、アメリカのエースホテルを多数担当し、その特徴をよく理解している内装デザインナー「コミューン・デザイン」が行いました。提案されたデザインはクライアントであるNTT都市開発にとってもホテルの個性を映し出すデザインと捉えておりましたが、実現に向けては機能性やコスト・実現性など様々なハードルがあり、それを一つ一つ克服しながら実現していきました。
実際に違うカテゴリーや違う専門性、違う文化圏を融合させてモノを作っていくためには、どこからがアーティストの仕事で、どこまでが内装施工者の仕事なのか、などの境目を、法規やコスト、工期を考慮しながら決めていかなければなりません。そこを、各専門家同士のコミュニケーションをサポートしながら、最適な形で提案していくのが、本プロジェクトで私たちが行ったプロジェクトマネジメントのひとつです。
例えば、「エースホテル京都」には、アーティストとのコラボレーションによる、照明、カウンター壁、床、間仕切りなどが多く存在します。法規上、内装として作ることが厳しいモノがあればアートとして作ることを提案します。また、デザインが複雑であったり高価な資材の採用によりコスト調整が必要な時には、使用範囲を限定したり、コンセプトを維持しながらデザインをシンプル化したりするといった提案も行ってきました。 

プロジェクトの方向性を一つにまとめる「デザイン会議」

こうした現場における調整は、デザインコンセプトを十分に理解したうえで、それをゆがめないことを第一に検討が行われます。そして個々の現場で検討された内容については、全関係者が参加する「デザイン会議」という会議体で議論し、本当にコンセプトを妨げていないか、全体のバランスの中で何を優先すべきかなどの最終確認を行い、決定します。

たたみスイート。前方テーブルトップは、銅板 ⓒNacasa & Partners

ホテルプロジェクトは他の用途の建築に比べて関係者が多いと言われますが、当プロジェクトも同様に、クライアント、オペレーター、建築デザイン監修者、本体設計者、内装デザイナー他、関連コンサルタントなどが多数存在し、調整も複雑になります。その複雑な調整を、全関係者が同じテーブルについて多方面から同時に検証し、議論して、決定のプロセスを共有することがデザイン会議の役割です。
当会議は、設計段階から行われており、当初は、それぞれが思い描くイメージを出し合いまとめていくことが重要なテーマでした。テーマはフェーズごとに変わっていきますが、多くの融合が求められる当プロジェクトでは、このような会議体運営が、特に重要なマネジメントのひとつとなりました。

チームで実現させた成果

「エースホテル京都」はコロナの影響もあり、当初の予定より少し遅れて、2020年6月にオープンし、国内外からも好評価を頂いています。「ミシュランガイド京都・大阪+岡山 2021」 では3パビリオンを、2020年の「アジア・パシフィック・ホテル投資会議」(HICAP)では、完成までの課題克服・開発規模・イノベーション・パフォーマンス・投資収益率などを選定基準とした、その年開業した最優秀のホテルに贈られる「Reggie Shiu Development of the Year」を受賞しました。

中2階のメキシカンレストラン 「PIOPIKO」 ⓒForward Stroke inc.

ニーズを的確につかむ

今後も、ホテル特有の技術的要素やホテルオペレーションへの理解の難しさ、プロジェクト関係者や工事・発注区分の複雑さという面から、クライアント立場でプロジェクト推進やマネジメントを行う役割へのニーズは高まっていくと思われます。
また、利用者からは、ライフスタイルが多様化する中で、個人の価値観を大切にした革新的で個人的なサービスの需要も増えていくのではないでしょうか。
私達は、今まで蓄積された経験をもとに新しい流れを的確かつバランス良く取り入れながら、クライアントと利用者両者にとって満足度の高い価値創出を行うチームとして、質の高い社会づくりに貢献していきたいと考えています。

旧京都中央電話局を利用した客室 ⓒForward Stroke inc.

「エースホテル京都」概要

ホテル名称 エースホテル京都
ホテルオーナー NTT都市開発株式会社
ホテルオペレーター エースホテル
所在地 京都市中京区
客室数 213室
建築デザイン監修 隈研吾建築都市設計事務所
建築設計 株式会社NTT ファシリティーズ
内装設計/デザイン 入江三宅設計事務所/Commune Design
プロジェクトマネジメント 株式会社 日建設計
施工 建築 大林組  内装 三越伊勢丹プロパティ・デザイン 

担当者プロフィール

杉本 久志
新領域開拓部門 ソリューショングループ
ソリューション戦略室 アソシエイト

2008年に東京大学大学院建築学専攻卒業後、日建設計入社。プロジェクトマネジメントやFM・CRE戦略を通じ、企業利益と社会的価値が共 存できる建築環境を目指している。
これまで、日野自動車古河工場(2016)、日比谷パークフロント(2017)、ザ・ホテル青龍京都清水(2020)、エースホテル京都(2020)、ザ・リッツ・カールトン日光(2020)など幅広いプロジェクトでプロジェクトマネージャーやオーナーズコンサルタントとしてマネジメントを手掛けてきた。この他、企業不動産の利活用や維持保全戦略の策定といった、ファシリティ戦略に対するコンサルティング経験も豊富に有する。一級建築士。

高 裕善
新領域開拓部門 ソリューショングループ
ソリューション部

東京大学大学院 建築学専攻修了後、2010年日建設計入社。専門はプロジェクトマネジメント。
国内外でオフィス、教育施設、商業施設など様々な用途のプロジェクトを担当。
これらの経験を活かし、近年は主に外資系ホテル開発のプロジェクトマネジメントを手掛けている。
LG本社ビル改修計画(2012)、ロッテワールドタワー展望台(2017)、エースホテル京都(2020)、W Osaka(2021)等。博士(工学)

李 欣
新領域開拓部門 ソリューショングループ
ソリューション部

2014年日建設計入社。華為松山湖研究開発センター一期・二期の設計プロジェクトマネジメントを経て、W Osaka、エースホテル京都、WEホテルTOYA一期 等外資系ディベロッパー、外資系ホテルのプロジェクトマネジメントを担当。

当サイトでは、クッキー(Cookie)を使用しています。このウェブサイトを引き続き使用することにより、お客様はクッキーの使用に同意するものとします。Our policy.