建築でワークスタイルに変化を与えた「仙川キユーポート」

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「課題解決の方法は、いつもクライアントの声の中にあります」。約3年にわたるワークショップの積み重ねを経て完成したキユーピーの新しい社屋、仙川キユーポート。冒頭は、その仙川キユーポートの設計担当者である佐藤健の言葉です。このように、日建設計におけるワークプレイスデザインの設計技術は、クライアントの答えを引き出すプロセスそのものにある、と私たちは考えています。

現状にある課題を紐解き、あるべき形に結い直す。そのためには、徹底的に現状を把握する必要があります。さらにはそのプロセスこそが、新しくできた空間以上にクライアントに影響を与えることもあるのです。空間づくりはもちろん、空間がお客様やユーザーに何を提供できるかを大切にして進めていく。その設計プロセスを、「仙川キユーポート」の事例をもとにご紹介します。

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会社や事業部などの壁を超えた新社屋「仙川キユーポート」

キユーピー仙川工場の跡地利用プロジェクトである「仙川キユーポート」。このプロジェクトの重要なテーマの1つは、キユーピーのグループ会社が一同に集うのにふさわしい新社屋となることでした。グループ会社とは言え異なる会社が集まって相乗効果を発揮するためには、会社や事業部などの壁を超えたコミュニケーションを実現できるスペースが必須なのです。

グループ全体の相乗効果を実現するために、取り入れたプロセスがワークショップでした。「一社の意見に偏ることを避けたい」、「偏った一部の意見を尊重するのではなく、平等に現場の現状を徹底的に把握する」などの意見をもとに進められたこのワークショップは、約3年もの時間をかけて行われました。
 

ワークショップで引き出した意見とは

いろいろな人たちに「プロジェクトチームへ参画していただきたい」と呼びかけることからスタートした、ワークショップ。まずは各社から数人ずつのチームを組んでもらい、次世代を担う人材である若手・中堅クラスを中心に様々な意見を集めました。これはプロジェクトに関するアイデアはもちろん、仕事への熱い思いや誇りを聞き出す狙いがあったからです。

また社員のおよそ半数が女性であることから、女性ならではの意見も徹底的に聞き出しました。これによって、各自のロッカー・パウダールームの使い方、ブーツの置き方まで、女性ならではの目線が大いに活かされています。

「新しい自分の居場所」を見つけるため、日常を抽出

さらに、普段の業務のありのままを抽出すべく、各社各部署1名ずつ選出し、仕事日記の執筆も依頼しました。その仕事日記からは、「いつもこんな風に暮らしている」、「後片付けを面倒くさいと思っている」など、一人一人の何気ない日常を抽出できました。

たとえば、新社屋では倉庫を持てないことを考慮すると、紙の削減が必要なことがわかりました。そこで、ファイルを全て並べた長さを測り、グラフ化して各部署の代表を集めて会議を開きました。また、紙の使用量が少ない部署の工夫を聞いたり,多い部署の理由を聞いたりというコミュニケーションを重ねます。その結果、本当に紙で保管しなければならないものは何かを追及して見極め、必要に応じてデータ化するという結論に至りました。このようなプロセスを挟むことで、紙削減への意識が高まるきっかけに繋がりました。

こもりがちな会議室の削減によるオープンな職場の創出

オープンな時間を生み出す会議室も、たくさんの意見によって変化を遂げました。まずは、各社の会議室の使用状況を細かくヒアリング。稼働率はもちろん、本当に会議室でやるべきことがなされているかを吟味するべく、会議の内容に至るまでリサーチしました。その結果、会議室に籠もりがちなワークスタイルを、コミュニケーション活性化のために大きく転換する提案に至りました。

まずは思い切って会議室そのものを削減。その代わりとして、コミュニケーションが生まれやすいオープンな打ち合わせ場所をたくさん作りました。ランチタイム以外は食堂も利用、各自のデスクを固定しないフリーアドレスを導入するなど、ワークスタイルに関わる点まで提案しました。

新しいワークスタイルと共に始まった仙川キユーポート

こうして出来上がった新社屋「仙川キューポート」は、広い視野を確保し常にお互いが見える“三角形オフィス構成”、グループ会社の相乗効果を最大限に発揮するために研究所階とオフィス階を交互に重ねる“ミルフィーユ構造”を特徴とした、それぞれの会社や部署間のコミュニケーションが密になる工夫を凝らした施設となりました。

ワークショップがよい影響を与えたのは、施設計画だけではありません。キユーピーではワークショップから得られた結果が、時に偉い人(社長)の意見よりも大切にされてきました。もちろん現場から吸収されたことのすべてが反映されているわけではありませんが、こうしたプロセスを経ることで「みんなで作ったオフィス」という意識が高まり、その意識が現在のオフィス運営に役立っています。

「当時からの企業理念【楽業偕悦】(志を同じくする人と仕事を楽しみ、悦びをともにする)という素晴らしい社風を、次世代を担う方々へ継承していくお手伝いができたことを幸せに感じた」。先代会長の中島雄一氏の時代からお付き合いのある設計担当者の佐藤の言葉通り、キユーピーの伝統である思想を受け継ぎつつも、よりグループ一丸となれる新社屋がこのように完成したのでした。

  • 佐藤 健

    佐藤 健

    執行役員
    設計部門 設計グループ プリンシパル

    1993年、工学院大学修士課程を経て、日建設計に入社。専門は建築意匠設計。入社以来、オフィス、ホテル、商業などの複合施設、研究所、スポーツ施設、大学など幅広い分野の設計を担当している。現在は国内の複合施設を中心に業務に従事している。日本建築家協会優秀建築選、日本建築学会作品選集、日経ニューオフィス経済産業大臣賞を受賞。一級建築士、日本建築家協会会員、日本建築学会会員。

  • 高橋 淳

    高橋 淳

    エンジニアリング部門サスティナブルデザイングループ 
    アソシエイト

    2000年、東京電機大学修士課程を経て、日建設計に入社。専門は建築意匠設計。「明治神宮外苑カフェ・スペーラ」(2006年)、「あいおいニッセイ同和損保日本橋本社ビル」(2010年)、「横浜三井ビルディング」(2012年)、「仙川キユーポート」(2014年)などを担当。2014年に仙川キユーポートにて、日経ニューオフィス賞(経済産業大臣賞)を受賞している。一級建築士、日本建築学会会員。

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