アジアのオフィスビルに日本的な高品質を導入
~北京・ 兆泰国際中心~
Scroll Down
1990年代からの中国・アジアの台頭により各都市では非常に多くのオフィスビルが建設されています。しかし、リーマンショック後、特に中国を中心として不動産市場への大量な資金供給が行われ、「建てれば売れる・貸せる」という一種バブルのような状況が生み出されました。そのような短期間による急激な量的供給が行われる中で、建物の計画・施工の質的な向上を図る視点はないがしろにされてきました。
そして、ビルの需要を上回る過剰供給となった現在、不動産市場で競争力を落とさず、長期に渡って価値を持ち続けるオフィスビル=都市のストックが求められるようになっています。
CATEGORY
北京のテナントビルに対するバリューアップ提案
中国各地に不動産を所有する現地大手デベロッパーであるクライアントより、北京市内で建設中の現地設計事務所にて設計を行ったテナントビルについて、バリューアップの提案が我々に求められました。
具体的なリクエストとしては、建物としての質的な向上を目指した計画全体の改善案と、外資系企業、特に日系企業の誘致を図るための具体方策といった内容で、日本のみならず中国にて数多くのオフィスビル設計を行なってきた日建設計の知見が期待されていました。
一方、既にビルは建設中であり、躯体もおおよそ完成した状態からのスタートでした。非常に限られた条件・時間での見直し作業であった為、私達は、まだ現実的に手を付けられる余地のある、ハード面ではインフィル部、そしてソフト面では使い方・テナント入居支援等にスポットを当て、提案を図りました。
具体的なリクエストとしては、建物としての質的な向上を目指した計画全体の改善案と、外資系企業、特に日系企業の誘致を図るための具体方策といった内容で、日本のみならず中国にて数多くのオフィスビル設計を行なってきた日建設計の知見が期待されていました。
一方、既にビルは建設中であり、躯体もおおよそ完成した状態からのスタートでした。非常に限られた条件・時間での見直し作業であった為、私達は、まだ現実的に手を付けられる余地のある、ハード面ではインフィル部、そしてソフト面では使い方・テナント入居支援等にスポットを当て、提案を図りました。
建物名 兆泰国際中心(A2)、施主 兆泰集団、所在地 北京市朝陽区、敷地面積 9,370㎡、延床面積 170,150㎡、地下6階、地上20階
バランスを取りながら、効果的な改善提案
まずは、建築計画の視点から図面レビューを行い、プラン上での問題点の抽出、改善案の検討に取り掛かりました。例を挙げると、1階エントランスで交錯していたテナント従業員と外来客との動線の整理や、床面積確保を最優先するあまり不効率となった基準階プランの見直し、貸しづらいエリアについて会議室等のシェアリングスペースへの変更といった提案を行い、ビル全体としての価値向上を目指しました。次に、日本・欧米のハイグレードビルの事例とそこでの先進的な取り組みやトレンドを紹介しつつ、日系企業がテナントオフィスを選定する際に重視する各種設備やBCP対策の有無等のチェックポイントを示し、今回の建物と日本のハイグレードビルとの仕様・機能を比較したうえで、デベロッパー側が費用・ニーズに応じて選択できるバリューアップメニューを提供しました。一方で、中国企業はエントランス空間に派手さや豪華さを求めるが、現地法人としての日系企業にはそれはそれほど重要ではないと説明したところ、クライアントも得心していました。
加えて、テナント誘致の方法にも言及し、中国のテナントオフィスでは日本のように標準内装は装備されておらず、土地に慣れない外資系企業が内装工事手配を行わなければならないことが入居時のハードルになっていると考え、標準内装をテナントの入居時のオプションとして選択できる入居支援サービスとそのモックアップを提案しました。
加えて、テナント誘致の方法にも言及し、中国のテナントオフィスでは日本のように標準内装は装備されておらず、土地に慣れない外資系企業が内装工事手配を行わなければならないことが入居時のハードルになっていると考え、標準内装をテナントの入居時のオプションとして選択できる入居支援サービスとそのモックアップを提案しました。
日系企業がテナントオフィスを選定する際のチェックポイント
限られた中での実施項目の選択
様々な提案を行ったなかで、竣工までの数か月間で実施可能かつ、賃料アップやテナント誘致に繋がる内容がどうにか実施されました。
・日建設計提示の標準仕様によるオフィススペースのモックアップを設置し、テナント誘致に使用している。
・基準階で窓に面していないコア側居室をテナントエリアから除外していたが、窓面からの奥行きの事例検証を行い、可能な限りオフィススペースに組み込むかたちでテナント割りの変更し、貸し面積を増加させた。
・日系企業はじめ外資系企業のニーズに繋がらない各階のシャワー室を中止し、共用となる給湯室やトイレの充実を図った。
・大きなトップライトがあるテナントエリアに対しては、後工事での設置が困難なシェードを本体工事で設置した。
この他にも1階動線の整理による受付・セキュリティゲートの変更等も竣工後の改修工事として継続検討となりました。
・日建設計提示の標準仕様によるオフィススペースのモックアップを設置し、テナント誘致に使用している。
・基準階で窓に面していないコア側居室をテナントエリアから除外していたが、窓面からの奥行きの事例検証を行い、可能な限りオフィススペースに組み込むかたちでテナント割りの変更し、貸し面積を増加させた。
・日系企業はじめ外資系企業のニーズに繋がらない各階のシャワー室を中止し、共用となる給湯室やトイレの充実を図った。
・大きなトップライトがあるテナントエリアに対しては、後工事での設置が困難なシェードを本体工事で設置した。
この他にも1階動線の整理による受付・セキュリティゲートの変更等も竣工後の改修工事として継続検討となりました。
左:テナントオフィススペースのモックアップ、中央:中国では、テナント入居時は仕上げの無い状態が通常、右:小便器下の汚垂石、温水シャワー付大便器など日本の「当たり前」を積極的に導入
日本品質の海外展開
グローバル経済下で大幅に増えた海外拠点の重要度は変わらないものの、コロナ禍で以前のような人の往来は激減しており、規模・数的な再編が進んでいます。また、各国内でリモートワークが定着し、いわゆる働き方改革が進むのと同様に海外拠点もその運用方法について大幅な見直しが迫られると予想され、そこへの適応がテナントビルの競争力で重要度を持ってきます。私達は、ビルオーナーだけでなく、テナント入居者側のニーズにも応じられる新しいソリューションの提供を行います。アジア、特に中国では生活レベルが目覚ましく向上しており、今までのように派手なビルを建てれば入居者が埋まるという構造は壊れつつあります。また、デベロッパーも建物の長期的な保有経験がなく、開発後の運営ノウハウは極めて乏しいのが現状です。そのような環境の中で、長年のオフィスビルの開発・運営実績を踏まえた日本の開発者や設計者のノウハウが今後ますます求められるものと感じております。