コストマネジメントレポート

2019年11月号を掲載しました。
「企業景況感の悪化から工事価格の下落基調が強まる」

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「コストマネジメントレポート」(季報)は、国内外の経済情勢を概観し、設計事務所トップシェアの実績から得られる豊富なコストデータを活かし、中立的な視点での独自の建設市場分析結果をタイムリーにお伝えしていきます。

※本レポートは情報提供を目的として日建設計エンジニアリング部門コストマネジメントグループが作成しています。記載の内容等は作成時点のものであり、完全性を保証するものではありません。内容等は予告なしに変更する場合があります。

企業景況感の悪化から工事価格の下落基調が強まる

企業景況感の悪化に伴い建築投資減少の見込み

企業(製造業・非製造業)景況感が悪化している。9月の全国企業短期経済観測調査(日銀短観)では業況判断DI*が2018年12月調査から3四半期連続で悪化し、先行きも悪化する見通し。業況判断DIは民間設備投資と相関が高く(6ヶ月のタイムラグがあり、業況判断DIが先行する傾向)、業況判断DIの悪化により民間設備投資計画は慎重化すると考えられる(図1)。
民間設備投資の減少に伴い、 2019年度から2020年度にかけて建築非住宅の投資が減少し、建築投資全体(土木除く)も減少する見込みである(図2)。
※業況判断DI:日本銀行の企業短期経済観測調査(日銀短観)で発表される景気の判断指数で、「景気が良い」と感じている企業の割合から、「景気が悪い」と感じている企業の割合を引いたもの。
  • 図1 業況判断DIと民間設備投資の推移
    資料:日本銀行「全国企業短期経済観測調査」、内閣府「四半期別GDP速報」

  • 図2 建築投資の伸び率
    資料:建設経済研究所「建設投資見通し」

競争案件の工事価格は下落特命案件との価格二極化が鮮明に

建築投資減少を見越して、施工会社各社は積極的な受注姿勢を示しており、殆どの価格競争案件で予定価格を下回る傾向にある。価格競争案件の平均乖離率*は前年よりもマイナス幅が拡大し-6.6%となっている(図3)。個別にみると乖離率が-21%に及ぶ案件も存在する。一方で特命案件の平均乖離率はプラスを維持しており、価格競争案件と特命案件の工事価格の二極化が鮮明になっている。
※平均乖離率:各案件の予定価格と見積金額の乖離率を年毎に平均した値。

工事価格の下落基調は設備工事・鉄骨工事が主要因

価格競争案件における見積価格の下落は、設備工事価格・鉄骨工事価格の下落が主要因となっている。特に設備工事は平均乖離率のマイナス幅が急拡大しており、価格競争激化に伴い施工会社各社が設備工事価格の圧縮を強めていると考えられる(図4)。鉄骨工事価格(材工共)は首都圏でも30万円/tを下回る案件が散見されるようになっている。
  • 図3 価格競争案件の平均乖離率
    資料:日建設計実績

  • 図4 価格競争案件の建築・設備の平均乖離率
    資料:日建設計実績

首都圏:工事価格の下落基調が強まる
関西圏:上昇、東海圏:弱含み

日建設計標準建設費指数”NSBPI”とは

日建設計では、独自に開発した建設物価の値動きを示す指数「日建設計標準建設費指数”NSBPI”」を用いて分析を行っている。 
日建設計標準建設費指数とは、標準賃貸オフィスを数量モデルとして、独自調査による実勢価格をタイムリーに反映させた工事価格を算出し指数化したもの。
2002年を100とし、第1四半期は1~3月、第2四半期は4~6月、第3四半期は7~9月、第4四半期は10~12月を示す。

工事価格の推移

首都圏:価格競争案件は工事価格が下落しており、下落基調が強まる。
関西圏:大型建設投資が予定されており、工事価格は上昇基調が継続。
東海圏:工事価格が弱含み。

図5 NSBPI(日建設計標準建設費指数)の推移

図6 NSBPI(日建設計標準建設費指数)の増減率と建築・設備の寄与度

材料価格の動向

鋼材 :上昇基調が頭打ち
生コン:大阪の上昇が顕著

鋼材は、スクラップ価格や鉄鉱石・原料炭などの原材料価格下落と、建築需要低迷による出荷量の減少を要因として価格が下落した。
生コンは出荷量が減少したものの価格が上昇。特に大阪は生コン協同組合が、非加入プラントの組合加入を推進したことで価格が上昇した。東京地区生コン組合は2020年4月契約から1000円/㎥の値上げを決定しているが、工事価格への影響は小さく、工事価格の下落基調に変化はないと見込む。
  • 図7 鋼材価格(普通鋼)の推移
    資料:経済調査会「建設資材価格指数」

  • 図8 生コン価格の推移
    資料:経済調査会「建設資材価格指数」

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