海外で選ばれるインテリアデザイン
~青島銀行董事長との対話から~
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中国・青島銀行新本店ビルの内装設計者として、日建スペースデザイン(※取材当時、現日建設計設計監理部門スペースデザイングループ、2024年4月1日に日建設計と合併)が選ばれた理由とは。クライアントの想いを形にするために何をしたのか。青島銀行董事長郭少泉氏(竣工当時董事長。以下、郭氏)と担当デザイナーとの対話から、日建グループのインテリアデザインが海外でもどのように貢献できるのかを述べたいと思います。
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青島銀行董事長郭少泉氏(中央右)と関係者で竣工記念の集合写真
文化と風土に寄り添うデザイン
Dialogue_1
Q 日建スペースデザインを選定した理由を教えてください。
郭氏 日建スペースデザインの提案は非常にインパクトがありました。青島銀行の特徴を的確にとらえており、立地、金融、テクノロジー、現代中国の上昇志向を巧みに表現していると思いました。
Q 日建スペースデザインを選定した理由を教えてください。
郭氏 日建スペースデザインの提案は非常にインパクトがありました。青島銀行の特徴を的確にとらえており、立地、金融、テクノロジー、現代中国の上昇志向を巧みに表現していると思いました。
中央に滝を配したエントランスロビー
Designer’s comment_1
青島銀行新本店の空間デザインは「水」を主軸に展開しました。その象徴的なしつらえとして、4層吹き抜けのエントランスロビーに配したのが落差12メートルの滝です。吹き抜けを囲むように2,700本の透明樹脂ワイヤーを吊るし、1本1本を伝って水が勢いよく流れ落ちる仕組みをつくりました。水盤に溜まった水はポンプで汲み上げられ、高機能のろ過装置で浄化され再び降り注ぎ、絶え間なく循環しているのです。
「水」をデザインの主軸にした理由は2つあります。
1つは中国に深く根ざした風水の思想です。風水では水=お金であり、建物内に水の流れをつくることは財運を高めるとされているので、流れ続ける滝によって、銀行業を生業とする青島銀行の繁栄を表現することにしました。水が水盤に受け止められ、一旦留まるところが大きなポイントです。
もう1つの理由は青島銀行新本店のロケーションです。美しいビーチが広がる砂浜の近傍に位置しているとともに、良質な水源である名山、嶗山(ろうざん)を望むこともできます。風水と立地をヒントに、水を感じる空間を意識しデザインしました。
青島銀行新本店の空間デザインは「水」を主軸に展開しました。その象徴的なしつらえとして、4層吹き抜けのエントランスロビーに配したのが落差12メートルの滝です。吹き抜けを囲むように2,700本の透明樹脂ワイヤーを吊るし、1本1本を伝って水が勢いよく流れ落ちる仕組みをつくりました。水盤に溜まった水はポンプで汲み上げられ、高機能のろ過装置で浄化され再び降り注ぎ、絶え間なく循環しているのです。
「水」をデザインの主軸にした理由は2つあります。
1つは中国に深く根ざした風水の思想です。風水では水=お金であり、建物内に水の流れをつくることは財運を高めるとされているので、流れ続ける滝によって、銀行業を生業とする青島銀行の繁栄を表現することにしました。水が水盤に受け止められ、一旦留まるところが大きなポイントです。
もう1つの理由は青島銀行新本店のロケーションです。美しいビーチが広がる砂浜の近傍に位置しているとともに、良質な水源である名山、嶗山(ろうざん)を望むこともできます。風水と立地をヒントに、水を感じる空間を意識しデザインしました。
施設内に大がかりな滝を設けるというのは、かなり大胆な提案でしたが、青島銀行には、新しい発想を求める進取の社風があります土地の文化や風土に寄り添うデザイン理念と、それをインパクトのある形で表現する手法が評価されたのではないかと思います。
設計品質の飽くなき追求
Dialogue_2
Q 日建スペースデザインが他のデザイン事務所と異なる点はありましたか。
郭 まずデザインが現代的で洗練されていました。また設計品質の追求にとても熱心だったのが印象的です。細部まで決して手を抜かず、施工中に起きた問題もきちんと解決してくれたおかげで、当初の設計方針を堅持しつつ、プロジェクトを実現することができました。
Q 日建スペースデザインが他のデザイン事務所と異なる点はありましたか。
郭 まずデザインが現代的で洗練されていました。また設計品質の追求にとても熱心だったのが印象的です。細部まで決して手を抜かず、施工中に起きた問題もきちんと解決してくれたおかげで、当初の設計方針を堅持しつつ、プロジェクトを実現することができました。
ビルの正面からエントランスロビーへ導く通路。照明で水の流れを表現
Designer’s comment_2
一般的に海外のデザイン事務所は、過度な装飾で豪華なデザインを提案する傾向があると思います。それに対して、私たちは装飾に頼らずインパクトがありながらもシンプルでシャープな空間を目指しました。形状、材質、色彩、照明のバランスを整え空間を構成する。そんな日本らしいデザインが、現代的・洗練という評価につながったのではないでしょうか。
設計品質を高めるために私たちが行ったのは、とにかく現場をよく見ることでした。スケルトン状態の建物をよく観察し、建築構造や設備の配置状況を繰り返し確認しました。日本と異なる中国の施工プロセス、仕様を理解し、思うようにいかないところは改めて考え直すことを重ねて、最善の空間を完成させるべく、デザイン的な視点を超えてチェックをしました。
たとえば滝が流れ落ちる水音。ロビーにいる人が心地よく安らぐ音質、音量にするために、水の流量を調整し、着水ポイントに音を軽減させる仕組みをつくりました。また中国の水道水の水質検証を行い、水を伝わせる樹脂ワイヤーが経年劣化で変色する恐れがあることがわかったので、循環ろ過装置の中に水質を改善させる仕組みを導入しました。日本であたりまえにしてきたクォリティ・コントロールを中国でも行った好例であると思います。
一般的に海外のデザイン事務所は、過度な装飾で豪華なデザインを提案する傾向があると思います。それに対して、私たちは装飾に頼らずインパクトがありながらもシンプルでシャープな空間を目指しました。形状、材質、色彩、照明のバランスを整え空間を構成する。そんな日本らしいデザインが、現代的・洗練という評価につながったのではないでしょうか。
設計品質を高めるために私たちが行ったのは、とにかく現場をよく見ることでした。スケルトン状態の建物をよく観察し、建築構造や設備の配置状況を繰り返し確認しました。日本と異なる中国の施工プロセス、仕様を理解し、思うようにいかないところは改めて考え直すことを重ねて、最善の空間を完成させるべく、デザイン的な視点を超えてチェックをしました。
たとえば滝が流れ落ちる水音。ロビーにいる人が心地よく安らぐ音質、音量にするために、水の流量を調整し、着水ポイントに音を軽減させる仕組みをつくりました。また中国の水道水の水質検証を行い、水を伝わせる樹脂ワイヤーが経年劣化で変色する恐れがあることがわかったので、循環ろ過装置の中に水質を改善させる仕組みを導入しました。日本であたりまえにしてきたクォリティ・コントロールを中国でも行った好例であると思います。
真摯な対応で良好な関係を築く
Dialogue_3
Q 日建スペースデザインの対応、仕事の進め方はいかがでしたか。
郭氏 デザイナーの仕事ぶりは緻密で、その報告はいつも詳細でした。アウトラインからディテールまで、真摯に責任を持って対応してくれました。通訳と設計サポートに当たったデザイナーも、熱心でサービス精神に溢れていました。終始良いコミュニケーションができたと思います。
Q 日建スペースデザインの対応、仕事の進め方はいかがでしたか。
郭氏 デザイナーの仕事ぶりは緻密で、その報告はいつも詳細でした。アウトラインからディテールまで、真摯に責任を持って対応してくれました。通訳と設計サポートに当たったデザイナーも、熱心でサービス精神に溢れていました。終始良いコミュニケーションができたと思います。
Designer’s comment_3
クライアントのリクエストは、どんなことでも真摯に受け止め、評価、検討し、その本質を理解するように努めました。こうした対応姿勢は、日本の仕事の場合と変わりません。ただ文化も言語も異なる中国の方々が相手ですから、パース・動画・模型を使うなど、できるだけわかりやすい説明・表現を心がけました。施工段階では、わかりづらい図面を手描きのスケッチで説明しました。
完成までに6年かかったこのプロジェクトでは、日建スペースデザインの中国人デザイナーの存在が大きかったと思います。クライアントや各施工者との調整をタイムリー且つ的確に進めることができました。現地の文化や仕事の進め方と日本の進め方にも精通した中国語ネイティブのデザイナーがいるということ、日建設計に中国を専門とするプロジェクトマネージャーがいることは、日建グループが中国のプロジェクトを手がける際の大きな強みと言えます。
クライアントのリクエストは、どんなことでも真摯に受け止め、評価、検討し、その本質を理解するように努めました。こうした対応姿勢は、日本の仕事の場合と変わりません。ただ文化も言語も異なる中国の方々が相手ですから、パース・動画・模型を使うなど、できるだけわかりやすい説明・表現を心がけました。施工段階では、わかりづらい図面を手描きのスケッチで説明しました。
完成までに6年かかったこのプロジェクトでは、日建スペースデザインの中国人デザイナーの存在が大きかったと思います。クライアントや各施工者との調整をタイムリー且つ的確に進めることができました。現地の文化や仕事の進め方と日本の進め方にも精通した中国語ネイティブのデザイナーがいるということ、日建設計に中国を専門とするプロジェクトマネージャーがいることは、日建グループが中国のプロジェクトを手がける際の大きな強みと言えます。
さざ波をイメージした装飾ガラスを用いたVIP専用エントランス
ロビーを満たす水の気配が、訪れる人にやすらぎと落ち着きを提供し、銀行にいるとは思えないくつろぎに誘う青島銀行新本店ビル。クライアントの想いを聴き、理解し、形にするデザインパートナーであることが、日建スペースデザインの使命です。これからも空間デザインを通して、世界中のクライアントの想いを実現していきます。
Photo : Kenji Masunaga(集合写真以外)
Photo : Kenji Masunaga(集合写真以外)