“ランドスケープファースト”が生む新しい都市開発
うめきた2期地区開発プロジェクト
「グラングリーン大阪」

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西日本最大のターミナル駅「JR大阪駅」北側で先行開発区域「グランフロント大阪」に続き開発が進められてきた、うめきた2期「グラングリーン大阪」。大規模ターミナル駅直結としては世界最大規模の都市公園「うめきた公園」を中心に、オフィス・商業施設・ホテル・分譲住宅などを一体的に整備するプロジェクトです。その開発は、グラングリーン大阪だけで9.1ha、今回整備された周辺道路等を含む、うめきた2期地区全体で約11.8haの緑化空間を創出すべく、“ランドスケープファースト”で進められてきました。2024年9月6日に先行まちびらきを迎えたこのプロジェクトにおけるランドスケープの取り組みを中心に、これまでの歩みをご紹介します。

先行まちびらきを迎えた「グラングリーン⼤阪」うめきた公園 サウスパーク(夕景)
©Akira Ito(aifoto)

都市の中心に自然豊かなオープンスペースを生む「Osaka MIDORI LIFE」

うめきた地区の開発がスタートしたのは2002年のこと。2013年には先行開発区域が「グランフロント大阪」として開業し、翌年、その西側に位置する2期開発区域の民間募集提案(一次募集)が行われました。そこで生まれたのが、先行開発区域など周辺のまちを含め、大阪都心のコアとなるパブリックスペースとして開発するというアイデア。この考えが2017年に開発事業者によって「Osaka MIDORI LIFE」という都市ビジョンとして結実し、「すべての人々に開かれ、誰もが自由にアクセスでき、そこで人間の行動が豊かに展開される緑豊かなオープンスペース」の実現に向け、ランドスケープファーストの開発が始動することになりました。

グラングリーン大阪 完成予想図
©うめきた2期開発事業者

とはいえ、「グラングリーン大阪」は日建設計のほか、GGN、三菱地所設計、竹中工務店、大林組、日建ハウジングシステム、SANAA、安藤忠雄らが設計に関わり、南北に分かれた都市公園に加え、商業や住宅などさまざまな施設を整備していく必要があるという、非常に複雑なスキームです。そのため、そのデザインリードを世界有数のランドスケープデザイン事務所・GGNが担い、日建設計が公園・民地・道路などの大半のランドスケープデザインを一体的に行うことに。全関係者が集って議論を交わすワークショップが合計3回開催され、その中でさまざまな課題を解決していきました。

とくにGGNとの協働においては、日本らしさ・うめきたらしさの実現を掲げ、歴史や文化の徹底したリサーチが行われました。その中で見出されたのが、「大阪本来の豊かに潤った大地」というランドスケープコンセプトであり、日本らしさ、うめきたらしさがランドスケープデザインのディテールまで昇華されていくことになります。うめきた周辺はかつて、多様な生物が棲み、河川が行きかう潤った大地でした。その生命力あふれる大地を、うめきたの地12ヘクタール全体であらわにすることを大きな目標として掲げたのです。

見えない境界を越えて広がる、大規模ターミナル駅に直結した世界最大級の都市公園

「グラングリーン大阪」において構想されたのは、都市公園や西口広場と一体となった大規模なみどり空間です。都市公園と民間宅地で合わせて8ヘクタールの「みどり」※を創出、その中に建築群を境界なく配置することで、周辺地域に開かれた都市空間を目指しました。そのベースとなったのが、「ランドフォーム」「コア」「プレイス」「パス」というフレームワークです。
※「みどり」は全ての人々に開かれ、誰もがアクセスできるみどり豊かなパブリックスペースを指す

グランフロント大阪、グラングリーン大阪 マスタープラン

グラングリーン大阪の敷地は、大きくは北街区と南街区、そしてそれらをつなぐ都市公園からなります。これらを周辺も含めた空間として一体化するために最大3mの高低差のある「ランドフォーム(地形)」を設け、その形状を生かして3つの「コア(核)」を創出。さらに敷地全体に配した裏をつくらない正方形ボリュームの建物群が「プレイス(間)」を生み、これら多様な空間を主要動線となる「パス(道)」がつなぐ。この基本のプランニングによって、敷地内の各エリア、さらには敷地外周辺エリアとの連続性が生まれ、来街者が自然と敷地内に引き込まれて出会いや気づきが生まれるまちが形成されます。

サウスパークの芝生広場と噴水が楽しめる水盤
©Akira Ito(aifoto)

歩道空間と一体となったステッププラザ
©Akira Ito(aifoto)

その役割を果たすための仕掛けのひとつが「ひらめきの道」です。この歩行者用の回廊はランドフォームの隆起の逆側に配置され、建築の連なりが生み出す多様なプレイス(間)や、サウスパークの「芝生広場」、ノースパークの「うめきたの森」、南北街区を横切る道路沿いの階段状の広場「ステッププラザ」といったコア(核)をシームレスにつなぎます。歩みを進めると多様な光景が次々と見え隠れし、風景に奥行きや立体感が生まれることで、誰もが自分だけのサードプレイスを見つけることができるのです。

ひらめきの道よりサウスパークのランドスケープ・梅⽥スカイビルを望む
©Akira Ito(aifoto)

「みどりのものさし」による環境価値の評価・可視化

グラングリーン大阪でのランドスケープデザインにおいては、もちろん敷地全体の植栽計画も重視しました。樹木の数は全街区で1600本以上に及びます。大阪の歴史や文化、自然環境を徹底的にリサーチし、GGNとともに1年以上の議論を経て植栽設計をまとめ、工事段階では理想の樹形や色づきを求めて日本全国の圃場を当たり樹木を選定しました。同時に、花色の異なる在来種の花木を厳選し、在来種を中心とした花色を重視したガーデンをつくりました。
  • 樹木材料検査の様子

  • 現地での植栽立会の様子

設計段階では、日照環境、風環境、人流等の調査解析といったシミュレーションを行い、自然環境の与える影響も緻密にリサーチしました。また、「みどりのものさし」により、これまで定量的な評価が難しかった「みどり」がもたらす環境価値を可視化しました。「温室効果ガスの削減」「樹木による空気の浄化」「温熱環境の改善」「生物多様性の促進」「雨水流出の抑制」の5項目ごとに評価方法を定めました。

グラングリーン大阪 みどりのものさしによる環境価値可視化イメージ
©NIKKEN SEKKEI LTD

この「みどりのものさし」で明らかになったのは、グラングリーン大阪の環境への貢献度合いです。集計データやシミュレーションを行った結果、CO₂の年間固定量は35.9トン、大気汚染物質の年間吸収量はSO₂が4.2kg、NO₂が10.7kg、O₃が16.6kgという数値が明らかになり、夏季の体感温度の低下や、雨水流出抑制効果も数値で示されました。なかでも樹林率は開発前の3%から12%に増加すると予測され、都心の一等地であるにもかかわらず、多様な生物が生息する環境の形成に寄与することがわかりました。

グラングリーン大阪で目指したのは、民間の都市開発と都市公園整備を一体的にとらえることで、誰もが身近に「みどり」を感じられる居場所を大阪都心に生み出すことです。その骨格となったのが、建物ありきではなく、オープンスペースのあり方をベースに建物や空間の調和を考える、ランドスケープファーストのマスタープラン。そこからは、「みどり」が生み出す環境価値、そして人々の活力に満ちた創造的な暮らしが生まれていきます。

2024年9月の先行まちびらきのあとには、2027年度中に全体まちびらきが予定されています。これからも、“ランドスケープファースト”な開発の価値を、ここ、うめきたから発信していきます。
■民地
設計:
全体統括 日建設計・三菱地所設計
北館 日建設計・竹中工務店
南館 三菱地所設計・日建設計・大林組・竹中工務店
グラングリーン大阪
THE NORTH RESIDENCE 竹中工務店・日建ハウジングシステム
南街区分譲棟 竹中工務店・日建ハウジングシステム
ランドスケープ:
デザインリード GGN
デザイナー 日建設計(南館:三菱地所設計・日建設計)
監理:
北館 日建設計
南館 三菱地所設計・日建設計
グラングリーン大阪
THE NORTH RESIDENCE 日建ハウジングシステム
南街区分譲棟 日建ハウジングシステム
施工: うめきた2期共同企業体(竹中工務店・大林組)
■都市公園
 一般園地(整備主体:大阪市・独立行政法人都市再生機構 ※アップグレード:事業者JV)
設計:
〇ベースグレード(公共)
基本設計 日建設計・三菱地所設計
実施設計 日建設計
〇アップグレード
デザイン提案など 事業者JV
デザインリード GGN
デザイナー 日建設計
照明デザイナー 内原智史デザイン事務所
サインデザイナー 井原理安デザイン事務所
サインプロジェクト
マネジメント メック・デザイン・インターナショナル
施工:
大林組・竹中工務店・竹中土木特定建設工事共同企業体
■公園施設(整備主体:事業者JV)
設計:
〇公園施設全体(大屋根を除く)
基本設計・実施設計 日建設計 ※VS. 設計監修:安藤忠雄建築研究所
〇大屋根
基本設計・実施設計 SANAA事務所
施工: うめきた2期共同企業体(竹中工務店・大林組)

  • 小松 良朗

    小松 良朗

    都市・社会基盤部門都市デザイングループ ランドスケープ設計部
    部長

    入社以来、オフィス、教育施設、ホテル、商業施設等のランドスケープデザインや特殊緑化技術を駆使した環境建築、Biophilic Designのプロジェクトに積極的に携わる。
    その地域、その場所でしかできない風景づくりを心がけ、人々の生活を豊かにする気持ちの良い空間づくりの創出に取り組んでいる。
    IFLA AAPME Award・日本造園学会賞・グッドデザイン賞の他、多くのプロジェクトで景観・環境関連賞を受賞。
    技術士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)、樹木医。近畿大学非常勤講師、大阪公立大学デザイン演習講師。

  • 平山 友子

    平山 友子

    都市・社会基盤部門都市デザイングループ ランドスケープ設計部
    アソシエイト

    ランドスケープデザイン設計事務所勤務を経て、2016年日建設計入社。依頼、教育施設・オフィス・ホテル・病院・パブリックスペース等の多岐に渡るランドスケープデザインに従事。うめきた2期では都市公園の設計を担当。
    技術士(設計部門)、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。武庫川女子大学非常勤講師。

  • 小野 光則

    小野 光則

    都市・社会基盤部門都市デザイングループ ランドスケープ設計部
    アソシエイト

    2011年入社。ホテル・教育施設・病院などのランドスケープデザインに関わる。
    グラングリーン大阪などを手掛け、敷地のなかだけでなく、外とのつながりを意識した設計を心がける

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