光ダクトシステムを導入して窓のない屋内に自然光を取り込む

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自然光は人々に心理的な安らぎを与えるだけでなく、健康にもよい働きがあることはよく知られています。建築に自然光を取り込む行為は古くから行われており、今でも多くの建物はその開口部から光を取り込んで人々の暮らしに役立てています。しかし開口部を設けられない部屋や光が届かない場所では、自然光ではなく蛍光灯やLEDなど人工の光が用いられています。

日建設計は、建物の奥や通常では光が入り込まない場所にも自然光を取り込める手法を開発しています。その手法は「光ダクトシステム」と呼ばれ、文字通り「光」を「ダクト」で運び込み室内を明るくするものです。室内を明るくする以外にも、様々なメリットがあり注目されています。

窓辺から明るさを取り入れるという常識を覆す、「光ダクトシステム」。その手法と技術、実例を紹介します。

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光ダクトシステムとは

光ダクトシステムとは、自然光を建築外部から取り込み、内側がアルミミラーになっているダクトを通して建物の必要な場所に光を運び込んで室内に明るさをもたらす技術のことです。これにより、本来取り込めない場所にも自然光を取り込み、自然エネルギーを効率よく利用することができます。
光ダクトシステムは、効率よく自然光を取り込む「採光部」、取り込んだ自然光を減衰させず搬送する「導光部」、自然光を室内に取り出す「放光部」の3つによって構成されています。

採光部は、外部から最大限に自然光を取り込む必要があるため、過去数年分の気象データから最適な形状を検討して設計します。導光部は、光を漏らさず運びこむため、高反射性の特殊鏡面アルミ材でダクトを形成。放光部は、自然光を効率的に室内に放出するようにつくります。

自然光は天候などに左右されやすく安定しないため、それに加えてセンサーによって常に明るさを感知し、人工照明の自動調光制御で明るさの変動をアシストすることで、安定した光を室内に取り込むことが可能になります。

光ダクトシステムがもたらす価値

光ダクトシステムには多くのメリットがあります。設置後はメンテナンスがほとんど必要ないだけでなく、自然エネルギーを利用するため、人工光と比べてCO2排出量を大幅に削減できます。建築物1年あたりのCO2排出量を評価するシステムである「ライフサイクルCO2」で光ダクトシステムを設置した建物を見た場合、初期設置時の換算CO2排出量は、電力削減効果によって、一般的には数年5年程度で回収できる計算となっています。それ以降は建物の生涯にわたり、コストをほとんど掛けずにCO2排出量の大幅な削減効果を持続します。

また、100%人工光に依存しないので、消費電力を抑えられます。明るい時は人工光を使わず、暗い時は自然光と人工光を併用する仕組みのため、実際にオフィスの執務空間の作業照明として本格導入したところで採光量を試算したところ、日中の照明電力の65%も削減することが可能と予想されました。

さらに、太陽光には近紫外線による衛生効果があるほか、自然光の変化や揺らぎには癒やしの効果も期待でき、自然光が届きにくい建物内の人々にも優れた心理効果を生み出すことができます。

光ダクトシステムを導入するとメリットが期待できる場所

光が届きにくい地下室でも、光ダクトシステムを導入すれば自然光の恩恵が期待できます。普段暗くなりがちな地下駐車場や地下街、地下居室のような自然光を取り込むのが困難な施設でも、垂直ダクト方式で地上の開口部から効率よく自然光を取り込めます。とりわけ地下駐車場は低照度で運用できるため、光ダクトシステムが効果的です。

高層ビルのエレベーターシャフトや水回りのような、建物の中心に配置されるコア周りでも効果を発揮します。コア周りは建物の中心に配置されるため、自然光の取り込みが困難な場所ですが、コア部分に垂直の光ダクトシステムを導入すれば、効率よく各部屋に自然光を取り込めるだけでなく、水回りの衛生効果も期待できます。

また、光ダクトシステムはスペースの少ない建物にも適しています。集合住宅では、コア周りの浴室、トイレなどでは窓を設置できないケースが多くなります。8階建て集合住宅の隣接する2戸のコア部分間に1.7m×1.2mの光ダクトシステムを設置した事例では1本の光ダクトだけで、16戸の窓のない浴室、洗面、トイレに対し、合計56部屋に自然光をも供給することが可能になるのです。

このように、採用するシーンや敷地特性などに合わせた光ダクトシステムを設置することで、様々な建物にも光を取り入れることが可能になりました。特に日建設計では建築計画の初期段階から光ダクトシステムを積極的に取り入れ、多くの建物の要望を叶えてきました。これからも、多くの建物に自然光の恩恵を得てもらえるように提案していきます。

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