「マンション再生」のために私たちのできること

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2025年現在、国内では700万戸を超えるマンションのうち、築40年以上経過したものは約140万戸となっており、10年後には倍増する見込みです。高経年マンションにとっては、耐震性能など防災への備え、バリアフリー化、現代的なライフスタイルへの対応、など建物の機能更新が喫緊の課題です。
また、分譲マンションに必要な長期的な管理・運営に対しては、所有者や居住者といった担い手の高齢化の課題があります。
「マンション再生」という社会課題に対し、日建設計は所有者や居住者の皆さんと一緒に円滑にマンションを再生するための解決方法を検討します。
マンション再生を専門とするコンサルタントや、10万戸を超える集合住宅設計の経験をもつ建築士らがワンチームとなり、豊富な知見を生かして総合的な視点からマンション再生をご支援します。

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相談からマンション再生実現まで支援

マンションの再生には、修繕・改修、建替えなどさまざまな方法があります。例えば、建替えの場合は、住戸数を増やしたり、複合施設にしたりとアプローチも色々です。再生コンサルタントは、そうした多様な選択肢の中から、権利者にとって最善の方法を導く役割を果たします。
具体的には、権利者にとって以下のようなメリットがあります。

① 建替え事業の経験に基づく専門家のノウハウを活用し、具体的な検討・計画ができる
② 行政からの情報収集等が行いやすくなる
③ 第三者が入ることで、権利者の意向把握や意見調整を行いやすくなる
④ 権利者のみなさんの時間と労力を軽減できる
⑤ ディベロッパー選定にあたって、より良い提案を受けることができる
⑥ 建替え事業に精通した各種専門家(弁護士・不動産鑑定士・司法書士・税理士など)の紹介を受けることができる

日建設計は再生コンサルタントとして、また設計者として、最初のご相談から権利者のみなさんとともに再生実現に向けて伴走します。

マンション建替えを体験した権利者の声——4つの実例より

マンション再生は、建築物の機能を更新させ、周辺環境に新しい人流を生み、地域の活性化にもつながるなど大きな社会的インパクトをもたらします。再生に向け、権利者たちはどのようなプロセスを経て、新しい住居での暮らしを手にしたのでしょうか。
日建設計とともにマンション再生を経験した権利者の皆さんに、事業を振り返っていただきました。

CASE1
花咲団地マンション建替え事業「横濱紅葉坂レジデンス」——「紅葉を楽しむ道」や多様な共用施設が充実

三輪晃久写真研究所

  建替え前 建替え前
所在地 神奈川県横浜市
竣工 1958 2011
延床面積 5,953.00 40,349.00
階数 地上4 地上11 地下1
総戸数・棟数 88戸・4棟 368戸・4棟
事業の特徴 隣接地の取り込みと全員同意による事業推進
備考 再生コンサルティング:都市空間研究所
設計:日建設計
 
  • 建替え前:花咲団地

  • 建替え後:横濱紅葉坂レジデンス
    三輪晃久写真研究所

  • 三輪晃久写真研究所

  • 三輪晃久写真研究所

建替えのポイント

神奈川県横浜市の旧花咲団地(1958年築・88戸)の建替え事業(368戸)。隣接地を取得することで環境設計制度を適用し、紅葉坂に面した一体的な景観形成を行った。

権利者の声
修繕と比較検討し、建替えへ

——建替に踏み切ったきっかけを教えてください。

権利者:2001年から花咲団地が再生の検討を始め、当初は修繕も視野に入れていました。住人の多くはこの場所で歳を重ねてきたので、多少建物が古くても、ここに住み続けたい気持ちが強くありました。でも協議を重ねる中で、修繕・改修の費用がかさむこと、エレベーターの設置が難しいことなどがあり、建替えの方が良いという方向に気持ちが向かいました。

地域に評価される(ご近所にも喜ばれる)事業計画を

——マンション再生の事業者選定をどのように行ったのでしょうか。

権利者:この建替え事業の特色は、事業協力者グループをコンペで選んだことです。
日建設計を含む事業者グループ(以下事業者グループという)の提案は、所有者に対する還元条件は実は1番ではありませんでした。選定するにあたって還元条件は大事でしたが、それだけではありません。私たちは、威圧的なマンションではなく木や花も豊富な緑あふれるマンションにしたいという思いがありました。その上で地域にも評価されるマンションになればよいと思っていました。
日建グループの提案は「ご近所にも喜ばれるマンション」というコンセプトを大切にしたいと感じました。また事業計画の内容が堅実で、安定した事業推進が期待できるとも思いました。これなら望んでいるものができそうだと意見が一致し、日建グループを選びました。

プロジェクト期間中の社会環境変化を信頼関係で乗り越える

——マンション再生の事業者選定はどのように行ったのでしょうか。

権利者:建替組合設立から竣工まで、3年半かかりました。その間にリーマンショックが起こり、日本経済も打撃を受けました。そのため、還元条件の変更や建設コストの削減など調整が必要で、大変な状況でした。そのような場面でも日建グループは、しっかりとした対応をしてくれて、無事乗り切ることができました。コンペ以来、居住者と日建グループで培ってきた信頼関係が、このプロジェクトを支えてくれたと思います。

CASE2
桜上水団地マンション建替え事業 「桜上水ガーデンズ」——広場や並木の記憶を継承した豊かな屋外空間

クドウフォト

  建替え前 建替え後
所在地 東京都世田谷区
竣工 1965 2015
延床面積 30,500.00 98,550.00
階数 地上5 地上14階 地下1
総戸数・棟数 住戸404戸・17 住戸878戸・8
事業の特徴 一団地の住宅施設を地区計画に移行した点
備考 再生コンサルティング・設計:日建設計
ランドスケープデザイン:ランドスケープ・プラス
 
  • 建替え前:桜上水団地

  • 建替え後:桜上水ガーデンズ
    クドウフォト

  • クドウフォト

  • クドウフォト

建替えのポイント

1965年に竣工した「桜上水団地」(404戸・17棟)を8棟878戸に建替え。築20年を過ぎたころから住民主導による建替え検討が進められ、住民が住み続けたいと考える建替え計画を基本方針として定めた。約50年経過して創り上げた団地の住環境を継承するため、旧団地の広場や緑地帯を建替え後のマンションに継承し、約180本の樹木等を大切に残した。さらに300本以上の高木を新植。緑豊かな住環境を守るとともに集会所を設け、住民が行ってきたコミュニティ活動の継続を可能とし、新旧住民の活発な交流を育んでいる。

権利者の声
議論に議論を重ね、 10年かけて建替え決定

——桜上水団地を建替えることになった経緯を教えてください。

権利者:1986年、当時の住民の一部が勉強会を始めたのが始まりです。その後、建替えに関して議論する組織を正式につくろうということになり、1994年に桜上水団地将来計画推進委員会が発足しました。そして1999年から日建設計にコンサルタントとして加わってもらいました。
議論を進める中でさまざまな計画案がありましたが、建替え決議にかけるとなぜか通らない状況が続きましてね。建替えに消極的な住人が多い棟があったことがその要因でした。建替え決議を成立させるためには区分所有者の80%の賛成に加え、17棟あるすべての棟で居住者の3分の2が賛成する必要があったからです。結局10年かけてようやく2009年9月に建替え決議が通りました。

——事業者と居住者はどのようにコミュニケーションをとったのでしょうか。

権利者:あまりに決議が通らないから、日建設計に「もう辞めます」って言われるかもしれないとハラハラしていました(笑)。それでも貴社は辛抱強く、冷静な立場で付き合ってくれました。建替の基本原案ができた後も、3カ月に1度くらいのペースで説明会を開いてくださいました。工事が始まってからも月1 ~ 2回の理事会を継続して開いたり、プロジェクトを通じて、最終的に140回を超える会議がありました。さらに月に一度は理事による現場検収をし、その他に住民同士のコミュニケーションの場も設けました。そのおかげで皆さん、安心して建替えに希望を抱くことができたと思います。
関係者全員でアイデアを出し合って、メッセージを伝え合いながら進めてきたからこそ、良い建替え結果になったと感謝しています。権利者の皆さんも満足してくれているから、なおさらそう思います。

高齢化したまちに若者と子どもがやってきた
——長年のご苦労の末、2015年に桜上水ガーデンズが竣工となりました。入居後のご感想は?

権利者:建替えて一番良かった点は、コミュニティが若返ったことに尽きます。建替え前は、団地内で会うのはおじいさん、おばあさんばかり。でも今は若い人もすごく増え、子どもが走り回っています(笑)。活気が生まれました。
僕の住んでいる棟は南北の両側に窓があり、建替え前と同じくサーッと風が通ります。まるで昔に帰ったみたいで、最初に窓を開けた瞬間「本当に戻ってきたんだ」とつくづく感じることができました。また、中庭が予想以上に広くなりました。学校から帰ってきた子どもたちも安心して遊ぶことができます。

Case3
サンクス東中野マンション建替え事業 「リビオ東中野ヒルトップ」——多様なプラン検討が合意形成を促進

  建替え前 建替え後
所在地 東京都中野区
竣工 1974 2022
延床面積 8,501.30 10,440.73
階数 地上8階 地下1 地上18階 地下1
総戸数 住戸106戸(店舗2区画) 住戸135戸(事務所1区画)
事業の特徴 非住宅用途(商業・事務所)の入ったマンション建替え
備考 再生コンサルティングおよび設計:日建設計
 
  • 建替え前:サンクス東中野

  • 建替え後:リビオ東中野ヒルトップ
    株式会社イメージグラム

  • 株式会社イメージグラム

  • 株式会社イメージグラム

建替えのポイント

1974年に竣工した「サンクス東中野」(106戸)を高層化し135戸に建替え。当社参画以前に検討されていた山手通り向き住戸を中心とした中層案を改善し、新宿高層ビル群を一望できる敷地特性を活かした高層配棟プランを多数検討・提示することで合意形成が進められた。前面の山手通りに対して角度を振った配棟計画にすることで余白をつくり、街に対しての豊かな緑道空間と約50mものエントランスアプローチを創出した。

権利者の声
震災を契機に建替えに踏み切る

——建替えの検討を始めたきっかけを教えてください。

権利者:建替え前は、外壁の剥落や年に何件もの漏水が発生していました。また、耐震診断で「大地震時の倒壊の可能性」が指摘されていました。東日本大震災をきっかけに、居住者同士で相談して、このままではまずいということになりました。それで不動産会社に依頼して、マンション再生の検討段階からサポートしてもらうことになりました。その不動産会社の紹介で日建設計に建替え計画案を提案してもらい、具体的な検討が進んでいきました。

多様なプラン提示に居住者が前向きに

——建替えに区分所有者として関わったご感想は?

権利者:検討開始から建替わるまでに8~9年かかりましたが、その間日建設計を含む事業関係者の方々は丁寧にコミュニケーションをとってくれました。特に、多種多様な配棟パターンの図面やパースを提示してくれたことで、居住者の期待値が高まりました。当初建替えに消極的だった人も、「こんな素晴らしいものができるんだ!」と視覚的に理解できたので、みんな前向きになりました。資産価値が上がるという期待も膨らみました。事業関係者の皆さんが紳士的に誠実に丁寧に対応してくれて、私たちはみんな本当に感謝しています。

建物デザインが誇りに

——入居後の感想をお聞かせ下さい。

権利者:現在のライフスタイルに合わせてコンパクトな部屋を選択しました。使いやすくて、身の丈に合った生活を再建できました。共用部分が豊かなのが有り難いです。また、外観デザインがモダンで気に入っています。道を歩く人がみんな振り返り、写真を撮る方もいっぱいいます。

Case4
外苑ハウスマンション建替え事業 「THE COURT神宮外苑」——国立競技場周辺のまちづくりと連携

株式会社クドウフォト

  建替え前 建替え後
所在地 東京都渋谷区
竣工 1964 2020
延床面積 15,865.91 59,156.18
階数 地上7階 地下1 地上23階 地下2
総戸数・棟数 住戸196戸・1 住戸409戸・1
事業の特徴 国立競技場周辺のまちづくりとの連携
備考 再生コンサルティング:日建設計、アール・アイ・エー
設計:日建設計、アール・アイ・エー、大林組
 
  • 建替え前:外苑ハウス
    大林組

  • 建替え後:THE COURT神宮外苑
    大林組

  • 益永研司写真事務所

  • 益永研司写真事務所

建替えのポイント

1964年の東京五輪開催時に外国人記者用宿舎として建設され、その後、分譲された「外苑ハウス」(196戸)の建替え事業。国立競技場の再整備等を含む周辺のまちづくりと連携しながら、地域に貢献する広場や緑地を確保しつつ、道路拡幅整備や免震構造の採用による防災性の向上を実現し、「THE COURT神宮外苑」(409戸)に生まれ変わった。

周辺のまちづくりと合わせた建替え検討が成功につながった

——建替え検討委員会として建替えに関わることになったきっかけと、活動を教えて下さい。

権利者:築約50年の老朽化マンションで耐震上の問題がありました。権利者の間では建替えの必要性をかなり共有していたと思います。2012年6月に建替え推進決議が採択され、建替え検討委員会をつくることになり、委員の一人に手を挙げました。
建替えの場合、まず権利者の合意をとりつけることが最も重要です。その合意形成のためには、どのような建物が建つのか、建替え前と比べて専有面積はどうなるのか、経済的な負担がどの程度あるのかなど、権利者が納得できる内容であることが必要です。しかし素人集団の委員会のメンバーでの検討は難しく、専門家の助言が必要でした。それで検討委員会は発足後直ちに日建設計を含む2社にアドバイザーとして加わって頂くことにしました。
検討中、国立競技場周辺の再開発促進区への編入を視野に入れた建替え案の可能性が出て、周辺のまちづくりと同じ枠組みの中で、建替えを検討する土壌ができ、最終的にその方向で進むことが決まりました。建替え事業のための経済的な条件も幅が広がりました。やはり生活再建に必要な住戸面積や経済条件が整えられたことが、委員会の大きな成果だったと思います。

合意形成と建替え条件

——約8年の長期間にわたり主要メンバーとして活躍されました。事業を終えた感想を教えてください。

権利者:建替えの目的も生活の状況も異なる権利者がいて、合意形成はやはり簡単ではありませんでした。合意を得るためには誰もが納得できるかたちでの建替え条件の構築が不可欠でした。様々な苦労の中で特に意を用いたのは、建替え条件を達成すること、透明性を確保して組合員の信頼を維持するということでした。
特に、事業協力者を選定する際に約束してもらった建替え条件を遵守してもらうよう何度も交渉したことを思い出します。事業協力者には建替え条件の重要性を理解してもらい完成までもって行けました。反省点は、個人的な意見ですが、建替え計画の設計を事業協力者と設計会社(貴社)に任せて建替組合としての関与が薄かった点ですね。
周辺まちづくりと連携の中で建替えを検討できたが成功の鍵だったと思います。複雑な事業でしたが、権利者とコンサルタント、事業協力者、設計者など各専門家の役割分担が適切にできていました。良いチームだったと思います。

建替えて良かったこと

——建替えによって、どのような効果がありましたか?

権利者:住民の高齢化が進んでいて工事期間中の仮住居移転は大きな負担でした。しかし、建替えた後は耐震性・安全性・セキュリティ等、居住環境は大きく改善しました。結果として資産価値の側面でも期待できるようで、現在は住んでいない方々の所有物件の賃貸需要も旺盛と聞いています。その意味で建替えたメリットは大きかったと思います。

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