コストマネジメントレポート
2022年10-12月号を掲載しました。
「建設物価の上昇継続 鋼材価格は一服するも設備工事は続伸」
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「コストマネジメントレポート」(季報)は、国内外の経済情勢を概観し、設計事務所トップシェアの実績から得られる豊富なコストデータを活かし、中立的な視点での独自の建設市場分析結果をタイムリーにお伝えしていきます。
※本レポートは情報提供を目的として日建設計エンジニアリング部門コストマネジメントグループが作成しています。記載の内容等は作成時点のものであり、完全性を保証するものではありません。内容等は予告なしに変更する場合があります。本レポートの無断転載を禁じます。
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建設物価の上昇継続
鋼材価格は一服するも設備工事は続伸
民間建築投資は増加の見込み
2022年度の民間建築投資は21年度比1%減るものの、23年度は国内経済の回復が進み2%増となる見込み(図1)。内訳をみると23年度の民間住宅は21年度比2%減となるが、民間非住宅が8%増と建設需要を押し上げている。
設備サブコンは堅調に手持ち工事高を確保
前号で示した通り、大手・準大手施工会社の22年度受注高予測は21年度と同水準で堅調に推移している。大手設備サブコンについても、空調4社*1・電気5社*2の受注高は安定して推移し、21年度の手持ち工事高は過去4年で最大、多くの企業が22年度は21年度以上の受注高を見込むなど、堅調な様子が窺える(図2)。好調な受注と人手不足により新規受注を抑制する動きが見られる。供給制約による納期遅延は改善していない。
*1:大手空調サブコン:高砂熱学工業、大気社、三機工業、ダイダンの4社。。
*2:大手電気サブコン:きんでん、関電工、九電工、ユアテック、トーエネックの5社。
*1:大手空調サブコン:高砂熱学工業、大気社、三機工業、ダイダンの4社。。
*2:大手電気サブコン:きんでん、関電工、九電工、ユアテック、トーエネックの5社。
鋼材価格高騰に一服感
建設物価への影響が大きい鋼材は、中国をはじめとする需要減少により価格上昇に一服感がみられる。東京製鐵の販売価格は、H型鋼が5月以降横ばいが続き、異形棒鋼は9月に下落に転じた(図3)。一方でガラス大手3社*3が10月からの再値上げを公表するなど、鋼材以外では原材料価格・人件費の上昇、為替相場の変動などを理由とした価格上昇が続いている。
*3:AGC・日本板硝子・セントラル硝子
*3:AGC・日本板硝子・セントラル硝子
建築(鋼材)の上昇幅は縮小
設備工事は拡大
堅調な受注状況、持続する資材価格上昇により今期も建設物価は上昇。工事別の物価指数をみると、建築(鋼材)の上昇幅は縮小したが、設備工事は前期比+4~6%とコスト上昇圧力が強く、全体では+3%と依然として高い上昇率が続いている(図4)。
厳しい受注競争が続く一部の超大型案件以外では、資材価格等の上昇を工事費に転嫁しやすい状況がみられ、今後も建設物価が下がりにくい状態が続く可能性がある。
厳しい受注競争が続く一部の超大型案件以外では、資材価格等の上昇を工事費に転嫁しやすい状況がみられ、今後も建設物価が下がりにくい状態が続く可能性がある。
建築緩むも設備は加速、総合指数の上昇が続く
日建設計標準建築費指数NSBPI
総合指数は前期比で約3%、前年同期比で約12%上昇。
鋼材の上昇圧力が弱まり、全体を推し上げる勢いが緩む結果となったが、ガラスなど秋以降の値上げを表明するメーカーもあり、建築資材の価格上昇圧力は依然として強い。
設備サブコンの選定に苦労する事例が増えており、設備機器に加え設備労務費の上昇圧力が強まっている。
鋼材の上昇圧力が弱まり、全体を推し上げる勢いが緩む結果となったが、ガラスなど秋以降の値上げを表明するメーカーもあり、建築資材の価格上昇圧力は依然として強い。
設備サブコンの選定に苦労する事例が増えており、設備機器に加え設備労務費の上昇圧力が強まっている。
原油価格は下落も円安進行は続く
上昇を続けていた原油価格は、ロシア産原油の供給が予想ほど減らない中、世界経済減速による需給緩和が意識され、22年6月以降下落した。
一方、円相場は円安が進み140円台に突入、1990年代後半の水準となった。円安進行が長く続くとメーカーの負担が増し、価格転嫁が進む可能性が高まる。
一方、円相場は円安が進み140円台に突入、1990年代後半の水準となった。円安進行が長く続くとメーカーの負担が増し、価格転嫁が進む可能性が高まる。
労働者不足感は高い水準で推移
労働者過不足率は21年12月以降1.1%を超える高水準で推移しており、8月は1.4%となった(図8)。職種別にみると左官、型枠工(建築)の不足率が大きく、それぞれ6.4%、3.9%、地域別では北海道が4.1%と高い。需給の改善の兆しは見えていない。