東東京市/YOSE by Z落語
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NADは、2022年10月21日(金)から23日(日)で開催された東東京市2022において屋形船を活用したエンターテインメントイベント「YOSE by Z落語」の企画・空間デザイン・運営を担当いたしました。
東東京市2022: https://gallery.copack.co.jp/exhibition/higashitokyoichi2022/
東東京市は、異なる背景を持つジャンルを超えた多種多様な新旧の出店者たちが、東東京を盛り上げるアイテムを厳選して販売するマーケットです。かつて江戸の商人や文化人が集った旧花街の奥ゆかしさが残る街・柳橋。ものづくりの街としても栄えてきた東京のイーストサイドで、東東京を拠点に活動しているつくり手による、新しいモノ、コト、ヒトの繋がりを生み出し、現代の「粋」の再興を目的に開催されています。第3回目となる今年は、会場をCPK GALLERY から地元・柳橋まで拡げ、地域資源や文化、人材を活かして街全体を巻き込み、盛り上げました。NADは東東京市の目的や背景に賛同し、企画・デザイン面で協力しています。
コロナ禍による都市の空洞化で衰退する観光・文化産業。失われつつある文化資源を未来に残すために何ができるか。
東東京市の会場である浅草橋・柳橋も例外ではありません。柳橋は江戸中期からある古い花街として栄えた歴史があり、今もなお屋形船という文化資源が地場産業として残っています。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって、柳橋の屋形船業ではキャンセルが相次ぎ、運航できずギリギリの経営を強いられる日々が続いています。このように東東京の観光業は窮地に立たされており、変革が迫られています。
一方、2022年5月に発表された世界経済フォーラム(WEF)による世界の観光ランキングで、日本は初めて世界1位を獲得する快挙を成し遂げました。特に評価された項目のひとつとして、世界遺産をはじめとした文化財や大型スタジアムなどのエンターテインメント施設である「文化資源」が挙げられました。アフターコロナにおける観光産業の再興・発展にはこの文化資源の活用が鍵になると言っても過言ではありません。
このような状況の中で、浅草橋・柳橋、ひいては日本・東京を代表する屋形船という文化資源を未来へ継承するために何ができるのでしょうか?また、コロナ禍を「伝統芸能・文化のアップデートの好機」と捉えると、観光・文化産業にはどのような変革が求められるのでしょうか。
歴史ある文化資源に現代の価値観を重ねる。新旧の文化融合による新たなエンターテインメントの創出を目指す。
「YOSE by Z落語」は、柳橋の地域資源である屋形船と伝統芸能である落語、さらには若年層の誘致を目的としたクラブミュージックを融合した次世代エンターテインメントです。土地や文化のコンテクストを読みながらこれまでになかった人流創出や地場産業の発展、文化継承を目指し、柳橋のこれからに向けた実験的な取組みとしてこのイベントを実施しました。
©Z落語
©Z落語
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現状復旧、当日の搬入出を原則という条件の中で、イベントに必要となる高座やDJブースを屋形船に搬入できるサイズに分割して製作し、現場では最小限の作業で設営できるようデザインしました。既存のちゃぶ台をベースとし、既製品のパーティションや最小限の造作で、イベント什器の廃棄量を最小限に抑えました。
照明は建築では使用しないような撮影用の照明器具を採用し、屋形船らしからぬ演出を行いました。これらは運航時の揺れによる転倒防止のためにクランプやインシュロックを用いて固定し、屋形船を傷つけない工夫を施しています。
©Z落語
屋形船や落語は、ターゲット層が非常に高齢かつ狭い業界であり、互いに文化継承の課題を抱えています。しかし、東東京においてはこのどちらもが重要な文化資源であり、ポテンシャルを活かしつつ、アップデートした取り組みで産業の維持・発展を目指す必要があると考えました。
彼らと協力し、次世代のリアルな場での交流や芸能の在り方を再考するとともに、クラブミュージックという異なるカルチャーを挿入することで体験価値の向上、屋形船や落語の敷居の低減を図り、ファンの幅を広げることを目指しました。
Z落語:https://z-rakugo.jp/
今回のイベントでは収益面や運営面など事業化に向けては様々な課題が浮き彫りとなりました。今後、地域産業を盛り上げる起爆剤となる事業になることを目指し、引き続き検討・改善を行う予定です。
協力/日本コパック株式会社・Z落語
Nikken Activity Lab(NAD)のサイトより転載