東京の玄関口に緑豊かなサードプレイスが誕生
~東京駅八重洲口開発 GRANROOF GARDEN~
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自宅でも職場でもない、居心地のよい第3の場所=サードプレイス。その重要性が注目され始めた1990年代当時は、カフェが居場所の代表例とされました。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックを経た今、緑のある開放的な屋外空間で過ごす心地よさに目覚める都市生活者が増えています。
東京駅八重洲口開発・グランルーフ2階に誕生した「GRANROOF GARDEN」は、多彩な過ごし方ができる緑豊かな屋外パブリックスペースです。日建設計がランドスケープデザインを手がけました。都心の新たなサードプレイスとして、人々の憩いの場になっています。
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ペデストリアンデッキを通行空間から滞在空間に
「光の帆」をデザインモチーフとする膜構造の大屋根と、南北の超高層ビルをつなぐペデストリアンデッキからなるグランルーフ。2013年の竣工以来、東京駅八重洲口を象徴するランドマークとなっています。歴史ある赤レンガ駅舎の丸の内口に対し、未来的な先進性をテーマに開発された八重洲口。その景観形成に大きな役割を果たしているのが、ダイナミックな大屋根を持つグランルーフだと言えるでしょう。
2階のペデストリアンデッキは、地上から高い位置にあるため、存在を認知されにくく、利用者が少ないという課題がありました。大屋根をスクリーンにした光のアート、ヨガ、マルシェ、ビヤガーデンといったイベントが開催されると、一時的に人が集まるものの、普段は南北ビル間の通行利用に留まり、閑散としていたのです。
このデッキを魅力的なパブリックスペースに変えて、日常的な憩いや賑わいの場を創出したい。グランルーフの設計者として何ができるかを考えてほしい。そうクライアントから求められた私たちは、人々がわざわざ上がって滞在したくなる空間にリニューアルするための議論を重ねていきました。
2階のペデストリアンデッキは、地上から高い位置にあるため、存在を認知されにくく、利用者が少ないという課題がありました。大屋根をスクリーンにした光のアート、ヨガ、マルシェ、ビヤガーデンといったイベントが開催されると、一時的に人が集まるものの、普段は南北ビル間の通行利用に留まり、閑散としていたのです。
このデッキを魅力的なパブリックスペースに変えて、日常的な憩いや賑わいの場を創出したい。グランルーフの設計者として何ができるかを考えてほしい。そうクライアントから求められた私たちは、人々がわざわざ上がって滞在したくなる空間にリニューアルするための議論を重ねていきました。
「都市の縁側」にヒューマンスケールな緑を
風が通り、頭上の大屋根と背後の壁に守られ、目の前には街のパノラマが広がるペデストリアンデッキ。ランドスケープデザインにあたり、まずイメージを重ねたのは、伝統的な日本家屋の縁側です。どちらも内と外の境界が曖昧な中間領域といえるスペースです。そこでデッキを「都市の縁側」ととらえ、江戸時代に花開いた園芸文化からインスピレーションを得て、都心にいながら四季折々の植栽が楽しめる仕掛けを施すことにしました。
環境への配慮から、もともと壁面を緑化していたペデストリアンデッキですが、リニューアルでは緑のある居場所をふんだんに取り入れました。バスやタクシーが発着する地上の駅前広場と違い、ここは人のための空間ですから、ヒューマンスケールな緑がふさわしいのです。プランターには東京駅周辺の自然植生をベースに、100種類以上の関東圏在来植物を植えています。季節ごとに咲く花が異なり、草木も成長していくので、訪れるたびに変化している植栽を見ることができます。
誰もが思い思いに過ごせる居場所をつくる
向かい側にできた東京ミッドタウン八重洲の眺めがよいエリア、緑に囲われてゆったりと落ち着けるエリア、イベントを開催しやすいエリアといったように、全長234mのデッキをゾーニング。天然木を使い鉄道で使われていた枕木のモジュールでベンチ、テーブル、カウンターなどを、エリアごとの特性に合わせて配置しました。ファニチャーはプランターと共にユニット化し、さまざまに組み合わせて多彩な居場所をつくっています。一部は可動式なので、各種イベントに対応した配置に変えることが可能です。デッキ全体各所に電源コンセントを整備、フリーWi-Fiも利用できます。
駅や高速バスの利用者、周辺のオフィスワーカー、来街者。目指したのは、誰もが気軽に快適に思い思いの時間を過ごせるスペースです。たとえば、移動中のすきま時間にカウンターでパソコン作業をする、ベンチで同行者と軽食をとりながら打ち合わせをする、ラウンジベッドに寝そべって疲れを癒す、ひな壇状のベンチシートから街を見下ろす…。一人で来ても誰かと来ても居心地がいい、まさにサードプレイスと呼べる多様で寛容な空間が生まれました。
近年、環境負荷の高まりによる気候変動対する危機感から、都市に緑を取り戻す動きが見られます。コロナ禍をきっかけに、身近な屋外空間に緑を求める人が増えているとも言われます。海外に比べてパブリックスペースが少ない日本ですが、都市生活の豊かさには、身近に緑を享受できる人のための居場所が欠かせません。行政に限らず、民間の事業者が街や施設の価値を上げるために創出する、「GRANROOF GARDEN」のように既存の公共空間を自然豊かなパブリックスペースへと更新する事例が、これからもっと増えていくでしょう。日建設計はランドスケープデザインを駆使して、今後も人のための緑豊かな空間づくりに貢献してまいります。
〇東京駅八重洲口開発 GRANROOF GARDEN
事業主 東日本旅客鉄道株式会社
ランドスケープデザイン監修 日建設計
施 工 株式会社小出製作所、株式会社ゴバイミドリ(Ⅰ期整備)
竣 工 Ⅰ期整備(北側エリア):2021年7月、Ⅱ期整備(デッキ全体):2023年7月
〇東京駅八重洲口開発 グランルーフ・グラントウキョウノースタワー
建築主 東日本旅客鉄道株式会社、三井不動産株式会社
所在地 東京都千代田区
敷地面積 14,439 ㎡
延べ面積 212,395 ㎡
最高高さ GL+205.00 m
竣工年 2013 年
備考 設計:東京駅八重洲開発設計共同企業体(日建設計・ジェイアール東日本建築設計事務所)
デザインアーキテクト:JAHN
構造コンセプトデザイン:Werner Sobek
事業主 東日本旅客鉄道株式会社
ランドスケープデザイン監修 日建設計
施 工 株式会社小出製作所、株式会社ゴバイミドリ(Ⅰ期整備)
竣 工 Ⅰ期整備(北側エリア):2021年7月、Ⅱ期整備(デッキ全体):2023年7月
〇東京駅八重洲口開発 グランルーフ・グラントウキョウノースタワー
建築主 東日本旅客鉄道株式会社、三井不動産株式会社
所在地 東京都千代田区
敷地面積 14,439 ㎡
延べ面積 212,395 ㎡
最高高さ GL+205.00 m
竣工年 2013 年
備考 設計:東京駅八重洲開発設計共同企業体(日建設計・ジェイアール東日本建築設計事務所)
デザインアーキテクト:JAHN
構造コンセプトデザイン:Werner Sobek