新しい超高層建築へのチャレンジ
~One Za’abeelのアイコニックな「THE LINK」を実現する構造設計と特殊施工 ~

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現在、ドバイでは、オフィス・ホテル・住宅・商業施設からなる複合施設「One Za’abeel」の建設が進んでいます。この建築は、高さ300m級の2つの超高層建築を100m上空で、「THE LINK」と呼ばれるブリッジにより繋ぐことで、構造的にも機能的にも一体の建築物とする、世界に類を見ない新しい挑戦です。
日建設計は、東京スカイツリー®を初め、超高層建築の構造設計を数多く手掛けてきました。日本国内で培った知識、技術、経験を生かし、海外各地で設計活動を行っています。
2014年に実施された本プロジェクトのデザインプロポーザルでは、空中に突き出たキャンティレバーを有する「THE LINK」によるアイコニックなデザインが、高い評価を受けました。
2020年8月中には、施工段階のハイライト、「THE LINK」のリフトアップが行われる予定です。

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「THE LINK」の果たす機能・役割

まず、2つのタワーを繋ぐブリッジ「THE LINK」により、解決した課題や新たな機能、役割等を説明いたします。

①分断された敷地と2つの超高層の課題

高速道路で分断された敷地に、独立した超高層建築を配置すると、2棟の連携がとれないことが課題でした。

②「THE LINK」による付加価値の創出

そこで、2つの超高層建築を、上空のブリッジ「THE LINK」で繋ぐことにより、2棟の機能的な連携を図り、効率的な運用を可能としました。また、空中のイベントスペース等、新たな付加価値を創出しました。

③アイコニックな意匠構造表現

2棟の超高層と「THE LINK」が創り出すドバイ金融街へのゲートとしてのフォルムや、上空100mに浮かぶキャンティレバーなど、意匠と構造が融合したアイコニックなデザインにより、ドバイに新たなインパクトをもたらす建築としました。

④構造システムによる高い安全性の確保

更に、「THE LINK」で2棟を繋ぐことにより、構造システム上の安全性が高まり、高さ300m級の超高層建築の設計で課題となる強風時の揺れを効果的に抑えることにも貢献しています。

構造設計の課題解決のための工夫とチャレンジ

このように「THE LINK」は、デザインや機能、安全性など、多方面において価値を生み出すものです。そして、この建築を実現させるための構造技術も、構造以外の課題解決や新たな価値創造に貢献しています。ここでは構造技術の工夫とチャレンジを紹介します。

コンクリートと鉄骨の合成構造の採用

一般にドバイの超高層建築は、安価なコンクリートを主体とした構造システムで設計されており、鉄骨構造を主体とした超高層はほとんどありませんでした。そのため、柱サイズが大きく、日本の超高層建築に比べ、有効な床面積の割合が少ない傾向にありました。そこで、日本の構造設計のノウハウを活かし、コンクリート柱内に鉄骨を配置した合成構造を採用し、適切な費用対効果で、柱寸法を3~5割ほど減らすことができました。また、ブリッジを安全に支えるため、タワー側の接続部は、コンクリート壁内(白色)に高強度鉄骨斜材(緑色)を配置した合成構造として強度を高めています。

ブリッジのダイヤグリッド構造と無柱空間

「THE LINK」は、ブリッジの軸線とタワーの軸線が一致しないために、自重により捩じれて撓むといった変形を避けることができません。そこで、ブリッジの4つの外面に沿って、主要な鉄骨部材をダイヤグリッド状に配置した剛な外殻構造システムを採用し撓みや捩じれ変形を小さくする設計としました。また、ダイヤグリッドは、捩じれを抑えるだけでなく、ブリッジ内部の大無柱空間を可能とし、魅力的な意匠デザインの一要素ともなっています。

強風に対する安全性と居住性の確保

高さ300m級の超高層建築の場合、強風に対する安全性と居住性の確保が重要な課題となります。One Za’abeelの構造設計では、世界で最も高いブルジュ・ハリファの風荷重評価も行った経験豊富なコンサルタントファームであるRWDIと協働を行いました。近接して配置された2つの建物と、ブリッジの廻りに生じる複雑な風の状態を風洞実験で評価を行い、風荷重を設定し、強風に対する複雑な建物挙動を把握し設計に生かしました。また、ブリッジのルーフに設置されるプールや低層部の風環境評価も行い、強風対策を講じました。

RWDIによる風洞実験と風環境評価 RWDIによる風洞実験と風環境評価(写真提供: RWDI)

強風に対する複雑な建物挙動

施工の課題解決のための工夫とチャレンジ

長さ約230mのブリッジを上空約100mの位置に安全に取り付けるためには、特殊な施工と工夫が必要です。ここでは、施工時におけるチャレンジを紹介いたします。

スライディング工法によるブリッジ組立

交通量の多い高速道路をまたぐブリッジは、安全性の高い施工を行う必要がありました。高速道路上部での作業を最小限とするため、高速道路脇でブロックを製作し、順次道路上にスライディングさせて、後続のブロックを繋ぎ合わせるといった工法を採用。 まず、工場で製作された鉄骨部材は、現場搬入後、長さ約20m~30mの8つのブロックにわけて組み立てられます。7回のスライディングで、幅約40mの高速道路を飛び越えるという特殊施工で、組み立てを完了しました。

ブリッジの巨大ブロック現場組立 ブリッジの巨大ブロック現場組立

3回目スライディング(2019年10月) 3回目スライディング(2019年10月)

4回目スライディング(2019年11月) 4回目スライディング(2019年11月)

5回目スライディング(2019年12月) 5回目スライディング(2019年12月)

リフトアップ工法によるブリッジの取付け

約230m重量約9,580トンの巨大な一つのブロックとなったブリッジは、上空約100mまでリフトアップされて、2つのタワーに取り付けられます。なお、残りのキャンティレバー先端部(重量約900トン)は、2回目のリフトアップにより、所定の位置に取り付けが予定されています。

リードコンサルタントとリーダーシップ

日建設計は、本プロジェクトのリードコンサルタントとして、多数の海外コンサルタントと業務調整を行い、設計と施工監理を担っています。ブリッジの設計と施工に関しては、20か国以上の技術者が関与していますが、日建設計は、リードコンサルタントとしての責任を果たすとともにリーダーシップをとり、難易度の高い設計と施工の実現を目指しています。

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