建築的視点から見た地震対策
~耐震構造・制振構造・免震構造・耐震グレード~

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地球は、プレートという十数枚の岩の板で覆われています。このプレート同士がぶつかる付近では強い力が生じ、地震となります。日本はちょうど4枚のプレート同士の境界上に位置しているため年間数千回の地震が発生しており、世界有数の地震大国と言われています。
建築基準法の耐震基準は、過去の巨大地震で発生した被害や経験をもとに、幾度も法改正されてきました。

日建設計では、全国一律で決まっている耐震基準を守るだけではなく、常に一歩先を行く研究を重ね法律以上の知見を設計に取り入れてきました。さらには、一棟一棟お客様のご要望を伺いながら具体的な地震対策の提案をきめ細かく行ってきました。
ここでは、地震と建物の揺れの関係、地震対策において重要な耐震グレードの考え方、その耐震性能を実現する3つの構造形式、さらには、構造躯体にとどまらず建物全体の安全性を考える性能設計についてご紹介します。

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構造設計

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地震が引き起こす建築物破壊の危険性とは

建築の設計という視点から地震を考える時、地震の揺れの大きさを示す震度とは別に、揺れの周期が重要となります。建物にはそれぞれ揺れやすい周期があり、地震の揺れの周期と一致し共振すると大きな被害となってしまいます。揺れの周期により地震は4種類に分類され、周期が約0.5〜1.0秒のものが短周期地震動、1.0〜2.0秒のものがやや短周期地震動、2.0~5.0秒のものがやや長周期地震動、5.0秒以上のものが長周期地震動と呼ばれています。住宅や小規模建築~中規模建築はやや短周期地震動の際に大きな揺れになりやすく、1995年の阪神・淡路大震災では大きな被害が観測されました。一方、高層建築物が影響を受けやすいのが長周期地震動です。地震動が長距離・長時間伝わるのが特徴で、2011年の東日本大震災では震源地から離れた地域でも高層建築物が大きく揺れました。

建物を地震から守る3つの構造

建物の地震対策を考えるとき、耐震構造・制振構造・免震構造の3つの構造を知る必要があります。いずれも地震による被害から建築を守る構造方式ですが、それぞれに特徴があります。建築に要求される機能にふさわしい、適切な構造を選択することが肝要です。

耐震構造とは

耐震構造は、主架構である柱・梁・壁の強さと硬さで地震に耐えます。地震のエネルギーが直接建物に伝わるため、揺れそのものは大きく、地震の規模によっては損傷を生じます。大地震後には、建物の損傷の程度を調査し、可能な限り修復を行う必要があります。
耐震構造において、コストを抑えるにはバランスよく壁などを配置することが重要です。小規模な住宅から高層の建物まで、最も広く採用されている構造形式です。

制振構造とは

制振構造は、建物内に配置した制振部材(ダンパー)で地震エネルギーを吸収します。そのため、主架構に伝わる地震エネルギーが抑えられ、損傷が軽減されます。大地震後も、ダンパーは基本的に交換不要ですが、損傷した場合も補修・交換が可能なため、比較的容易に、地震前の状態に戻すことができます。

耐震構造に比べ、ダンパーの効果により地震時の建物の揺れや変形を抑えることができます。また風揺れに対してダンパーを有効にすることも可能です。制振部材であるダンパーは、小規模建物に用いられるブレース状のものから、スカイツリーに採用されたPC造の中央シャフトである心柱まで、様々な形状のものが採用されています。

免震構造とは

免震構造は、建物と地盤を切り離してアイソレーターで浮かし、ダンパーで地震エネルギーを吸収します。建物と地盤の間に設ける免震層で地震エネルギーを吸収するため、建物自体の損傷はより軽減されます。大地震後にも、基本的にダンパーの交換は不要ですが、損傷程度を調査し、万一性能が低下したものは、補修・交換すれば地震前の状態に戻すことが可能になります。

耐震、制振構造に比べて、建物の揺れや変形をより小さく抑えられますが、初期設定費はやや高めで、免震層工事費・免震部材費・エキスパンション費が必要となります。ただし、階数が高くなるほどコストアップする比率は小さくなります。高い耐震グレードを達成するだけでなく、耐震・制振構造と比べて自由度の高い建築計画が可能です。

免震構造は、地震時の建物の揺れがゆっくりとしたものになるため、家具や備品の転倒・損害を抑え、地震後の建物機能を十分に維持することができ、近年大規模建築物でも多用されています。

性能設計とは

性能設計とは、お客様と対話をしながらお客様が求める性能を定め、それを実現するための設計です。地震後にどの機能を確保するか、またその機能を確保するために何を必要とするか、目標を定めます。
被災時でも重要な業務を遂行できる執務空間を確保することは、BCP(事業継続計画)を考える上で大切です。そのためには、構造躯体だけでなく非構造部材の安全性や、さらには、業務継続に必要な電力やライフラインなどをどのように確保するかも検討します。

このように、建築計画を立てる際は、敷地や地盤特性や建築物個別の条件、そして要求されている耐震グレードなどを考えながら、3つの構造形式のうちから適切なものを選択します。

耐震グレードとは

耐震グレードとは、建物に必要とされる耐震性能を指します。日建設計では、建築物を計画するお客様のご要望を伺いながら、建築物の規模や用途、建築物を使用するユーザーのことを考えながら、建物ごとの耐震グレードを決定します。大地震時の建物被害から、想定以上の地震に対して建物がどのように壊れるかに至るまで想定します。

耐震グレードを震度6程度の大地震時の被害状況を用いて説明してみます
基準級、上級、特級の3段階があります。

  • 基準級:建築基準法で定める最低限の耐震性能の建物で、骨組みに影響する変形が残り、余震で大破に至る可能性があります。また、仕上げ材は相当の損傷を受け、脱落する可能性があり、避難は必須で、業務活動を維持することはできません。
  • 上級:骨組みに若干の変形が残り耐力は低下しますが、余震で壊れることはありません。仕上げ等はある程度の損傷をうけます。最低限の業務活動に必要な機能は確保され、避難所としても利用できます。
  • 特級:軽微な被害で、骨組みにはほとんど変形が残りません。仕上げ等は若干の損傷を受けますが、ほとんど問題ありません。業務も遂行可能です。

日建設計は最良の技術を提供するために常に挑戦と研鑽を続け、常に時代の最先端を行く構造設計を実現してきました。変化し続ける社会的要請(経済原則、人の感受性の多様化、BCPや非構造材への配慮)や、これまでの知見では予想できない自然の脅威に対して、経験・知識におごることなく謙虚な姿勢で向かい合いながら、お客様に喜んでいただける建物を一緒に作り上げることを我々は大切にしています。

  • 鳥井 信吾

    鳥井 信吾

    執行役員
    九州代表

    1985年、北海道大学修士課程を経て、日建設計入社。専門は、構造設計。2019年まで構造設計グループに所属し、さいたま新都心の庁舎で極軟鋼制振壁を初採用、以降は日本生命丸の内ビル(日本鋼構造協会業績賞他多数)、東京ミッドタウン(CFT構造賞他多数)等、一工夫ある高層ビルを多く手掛けてきた。構造設計グループ代表を経て、2020年九州代表に就任。建築構造技術者協会や免振構造協会に所属し、都市防災や減災そして地域での活動を含めて多角的側面から社会貢献に積極的に取り組んでいる。

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