未来への知られざる提案——日建設計のプロフェッショナル・サービス
第2回 ファサードエンジニアリングによる新たな社会的価値創造(後篇)
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DELでは、現代の建築設計・都市計画に求められる新規領域・領域横断の設計技術について、5つの専門チームが技術提案や設計支援を行っている
そのDELが行うサービスの1つが高度な解析技術を基にした建築のファサードデザインです。ファサードは、外部と内部の環境をコントロールする装置でもあり、そのつくり方によって温度や照度、そして眺望など内部空間の環境が変化します。さらにファサードの形状は、景観や周辺環境に大きな影響を与えます。環境負荷を抑え、デザイン性の高いファサードをつくるため、DELは意匠や構造、設備、環境、施工などの領域を横断した創意工夫を積み重ねています。
DELで、ファサードエンジニアリングや環境コンピュテーショナルシミュレーションを率いる舘 景士郎(設計技術部門テックデザイングループダイレクター)に、日建設計のファサードデザインの独創性と、それがもたらす社会的価値について話を聞きました。
DELで、ファサードエンジニアリングや環境コンピュテーショナルシミュレーションを率いる舘 景士郎(設計技術部門テックデザイングループダイレクター)に、日建設計のファサードデザインの独創性と、それがもたらす社会的価値について話を聞きました。
中小ビルのファサード改善で脱炭素を実現——Envi-lope シリーズ
日建設計のファサードエンジニアリングで通底する考え方は「周辺環境との関係を緻密に分析すること」。都市の周辺環境を建築デザインに反映することを重視しているからです。
中でも、都市部の中小規模のビルに焦点を当てた環境配慮型の新規外装システムを日建設計は「Envi-lope(エンビロープ)」と名付け、そのシリーズ化に挑んでいます。Envi-lopeとは、Environment(環境)とEnvelope(包むもの)を合わせた造語で、環境負荷の少ない外皮を提案するものです。
中でも、都市部の中小規模のビルに焦点を当てた環境配慮型の新規外装システムを日建設計は「Envi-lope(エンビロープ)」と名付け、そのシリーズ化に挑んでいます。Envi-lopeとは、Environment(環境)とEnvelope(包むもの)を合わせた造語で、環境負荷の少ない外皮を提案するものです。
🄫野田東徳[雁光舎]
その背景には、ファサードのデザインで中小ビルの環境性能と価値を同時に向上させようという狙いがあります。中小ビルの敷地は狭く建物が密集しがちで、方位だけではなく周辺建物との関係によって、採光や通風、眺望などの環境に影響を受けやすい傾向があります。また、その棟数は大規模ビルより圧倒的に多く、新築だけでなく既存改築も含めて、環境改善のニーズが高くなっています。日射遮蔽や採光、通風など複数の環境調整を一括して担い、脱炭素と同時により良い内部環境を実現させるファサードシステムがEnvi-lopeなのです。
中小ビルは新築、既存ともに棟数が多く、ファサードによるエネルギー消費の抑制、環境調整へのニーズが高まっている
その第一弾として2022年に竣工した「神保町SFⅠ」に採用したのが「Envi-lope 01」です。外から見ると、鍋底に穴を開けたような丸い物体が、すっぽりと建物を覆っています。外壁ではなく、日射制御と眺望の確保を兼ね備えた外皮です。
円筒形の金物をワイヤーで繋げた外皮で覆われた「神保町SFI」 🄫野田東徳[雁光舎]
「神保町SFI」では有孔の金属外皮によって、日射遮蔽と同時に、明るさや眺望を確保している 🄫野田東徳[雁光舎]
「神保町SFI」では、時々刻々と変化する太陽光の動きと日射をDELが解析。独自のプログラムを使って、遮蔽が必要な日射から遮蔽物の位置や形を導く逆解析を行って、Envi-lope01の形状を導き出しました。
太陽の動きと周辺にある建物などとの関係を細かく分析し、遮蔽が必要となる日射から、遮蔽物の位置や形を逆解析
Envi-lope01は、建物の環境性能を向上させるだけでなく、材料や施工工程も最小化し、脱炭素を実現することを目指しました。「神保町SFI」では、プロジェクトの当初から瀬尾製作所(富山県高岡市)と最小の部材、最小の工程でつくる外装システムを検討し、共同開発しました。もともと仏具を製作していた瀬尾製作所が所有していた仏具用の金型に日建設計の担当者が着目。金属プレスで薄い鍋形の金物を製作し、それらをワイヤーで数珠つなぎにして、上下で支持をすることで建物を覆う外皮を考案しました。
この金物には、日射遮蔽の必要がない場所では視線や風を通すために三日月形の穴を開けています。どこにどのような穴を開ければよいかは方位や高さによって異なるため、穴の開け方はさまざまなパターンが考えられます。そこでDELがシミュレーションを重ねて条件整理をした結果、円筒形ユニットの最適化に辿り着きました。それは、たったの2種類の金物で全面を覆うと、約7割の日射遮蔽と、約7割の開放率、視線透過率が得られるという解でした。
部材はシンプルでも、取り付け位置は複雑です。施工はどのように実施したのでしょうか。
コンピュータで日射遮蔽が必要な場所を割り出し、金物の穴の向きと取り付ける方位や高さが最適となる形状を導き出しました。そのデータを基に、機械で自動的に金物をワイヤーに取り付ける製造管理方法をDELが考案しました。
この金物には、日射遮蔽の必要がない場所では視線や風を通すために三日月形の穴を開けています。どこにどのような穴を開ければよいかは方位や高さによって異なるため、穴の開け方はさまざまなパターンが考えられます。そこでDELがシミュレーションを重ねて条件整理をした結果、円筒形ユニットの最適化に辿り着きました。それは、たったの2種類の金物で全面を覆うと、約7割の日射遮蔽と、約7割の開放率、視線透過率が得られるという解でした。
部材はシンプルでも、取り付け位置は複雑です。施工はどのように実施したのでしょうか。
コンピュータで日射遮蔽が必要な場所を割り出し、金物の穴の向きと取り付ける方位や高さが最適となる形状を導き出しました。そのデータを基に、機械で自動的に金物をワイヤーに取り付ける製造管理方法をDELが考案しました。
日射遮蔽と眺望や明るさを両立する金属部材に開ける穴の形状を検討。方位、高さによって金物の最適な取り付け角度を導き出した
ワイヤーで金物を数珠つなぎにしたこの外装材は小さく軽く、専用のトラックではなく宅配便で現場に搬入することが可能なため、資材搬送でもCO2削減を達成しました。
中小ビルでは、設備バルコニーや避難階段など建築の裏側が表面に出てしまうことが多いところを、すっぽりと外皮で覆うことで、街並みの改善にも貢献しています。完成後、この金型越しに射す日射しの輝度を検証したところ、人が心地よいと感じる木漏れ日と似た光環境であることが明らかになりました。中小ビルを覆う外皮のデザインで、環境負荷を抑え、人が心地よいと感じる空間を創出するEnvi-lopeシリーズは、その第2弾が現在進行形です。
ファサードは、環境調整、構造、水密・気密などのディテール、コストやメンテナンスなどあらゆる方面の検討が求められ、建築内外の環境に多大な影響を与えます。それに対してDELは、最先端のデジタル技術とものづくりの両面から現代的なファサードのあり方を技術検討・提案をしています。設計の初期段階では、デジタル技術を駆使したシミュレーションなどによる検討で建築の付加価値を最大化。設計中期から現場のものづくり段階では、コストや施工性を合理化しながら、設計のコンセプトを実現するための支援を行います。
環境性能に加え、眺望やデザインなど様々な社会的価値が必要とされる建築ファサード。そうした複雑な課題に真摯に向き合うことこそが、多様な専門性を持つ顔ぶれが揃う技術者集団DELの強みです。
中小ビルでは、設備バルコニーや避難階段など建築の裏側が表面に出てしまうことが多いところを、すっぽりと外皮で覆うことで、街並みの改善にも貢献しています。完成後、この金型越しに射す日射しの輝度を検証したところ、人が心地よいと感じる木漏れ日と似た光環境であることが明らかになりました。中小ビルを覆う外皮のデザインで、環境負荷を抑え、人が心地よいと感じる空間を創出するEnvi-lopeシリーズは、その第2弾が現在進行形です。
ファサードは、環境調整、構造、水密・気密などのディテール、コストやメンテナンスなどあらゆる方面の検討が求められ、建築内外の環境に多大な影響を与えます。それに対してDELは、最先端のデジタル技術とものづくりの両面から現代的なファサードのあり方を技術検討・提案をしています。設計の初期段階では、デジタル技術を駆使したシミュレーションなどによる検討で建築の付加価値を最大化。設計中期から現場のものづくり段階では、コストや施工性を合理化しながら、設計のコンセプトを実現するための支援を行います。
環境性能に加え、眺望やデザインなど様々な社会的価値が必要とされる建築ファサード。そうした複雑な課題に真摯に向き合うことこそが、多様な専門性を持つ顔ぶれが揃う技術者集団DELの強みです。
日建設計のDELによるファサードエンジニアリング 右上:🄫SS
