未来への知られざる提案——日建設計のプロフェッショナル・サービス
第3回 建築形態と力の合理的な関係を求めて(後篇)
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DELでは、現代の建築設計・都市計画に求められる新規領域・領域横断の設計技術について、5つの専門チームが技術提案や設計支援を行っている。🄫日建設計
最適化で省資源化に貢献し、経済合理性を高める
まずは、建築の最適化にとってヒントとなる自然界の事例を紹介します。
例えばヒラメは、縦向きで泳ぐ一般的な魚とは違い、海底で重い水を持ち上げるために強固な骨が必要なしょうか、驚くことに建材にもあるように最小の鉄量で最大限に曲げ剛性を高めたH型鋼と同じ形をしています。
また、乾燥地帯の砂漠に生きるサボテンの内部はメッシュ状のチューブ組織であり、貯水すると同時に効率よく体を支えています。これは旧NY世界貿易センターに採用されたチューブ構造と同じ概念で、さらに発展したダイアグリッドチューブ構造も近年の高層ビルデザインに見ることができます。表皮部に見られる星形断面も、もしかすると風荷重を低減するのに役立っているかもしれません。これらは、重力や風力に加え高温乾燥という厳しい自然環境に適応するために生命体が自らの形状を最適化した事例です。
水圧に抗するためヒラメ(上)の骨は、H型鋼のようなかたちで強度を最大化。サボテン(下)の貯水組織は中空のメッシュ状で、効率的に曲げ剛性と強度を発揮する。🄫 mikroman6(上左)、日建設計(上右)、Charles Harker(下左)、Moelyn Photos(下中)、MWCPhoto(下右)
例えば建築では、構造資材量やコスト、構造体の変位などが最小にする対象です。表裏の関係ですが、費用対効果や強度といえば最大化の対象です。何を重視するのか、プロジェクトごとの価値観や優先事項を踏まえた上で問題を設定します。たとえば、材料総量を含む与えられた制約条件の中で変形量を最小にするなどは、構造最適化としてよく行われるアプローチです。
フォーム・ファインディング同様、玉井が中心となって開発した日建設計独自の最適化プログラムNSOptがここでも活躍。自社開発なので、建築に関わる条件のうち何を変数として変化させ、何を最適にするかを自由に設定することができるのが強みです。プロジェクトの与件に適した最適化手法を選択することもできまし、連携する解析プログラムも選ぶことができます。一般的に最適化手法というのは、〈設計変数の修正〉→〈(構造)解析〉→〈結果の評価〉という行程の中で常により良い結果になるように変数を修正する計算方法で、やがて極値と呼ばれる点に達すると、その周辺では結果がそれ以上改善されなくなる変数値の組み合わせが求まります。これが最適解と呼ばれるものです。このようにNSOptを駆使し、DELの構造形態創生チームはプロジェクトにとって最適な構造デザインや構法システムを提案しています。
DELで行う最適化のプロセスNSOpt。構造形態の変化を見える化して評価ができる。🄫日建設計
構造最適化には主に3の異なるアプローチがあります。与えられた形状に対する部材断面の最適配分、構造体のトポロジー最適化、そして形状の最適化です。下図ではそれぞれの方法での初期解と最適解、あるいは最適ではない解が比較のため表示されています。これらの手法は組み合わせて使うことも可能です。DELではそれらの手法を必要に応じて組み合わせて最適化の道を探ります。
左上の部材断面最適化は、許容できる変形の中でできるだけ断面サイズを小さくした。左下のトポロジー最適化では、一定の材料を使って、効果が小さい部材は細くするか究極は取り除き、有効なところには太い部材を採用することで、剛性を最大にする。右上の形状最適化は、部材のつながりは変えずに座標を変化させることでより剛な形状を求めている。重量は一定の下で検討。右下の合わせ技の図は、断面最適化と形状最適化を組み合わせた例。🄫日建設計
グリッドシェルの最適化。この問題では、メッシュに対するコンセプトの違いによる最適解の比較検討を行った。それぞれの最適化計算過程を視覚化することで最適解周辺の解も目視することができる。左:非対称を近似して対称軸を設けてより有効なアーチ形状;中:非90度グリッドで対称アーチを非対称に平行移動;より初期要求に近い条件を非対称アーチによって最適化。🄫日建設計
DELでは、フォーム・ファインディングと最適化を同時に実行することもあります。NSFormとNSOptはそれぞれに独立した非常に洗練された数値計算プログラムですが、DELでは独自開発に徹していることもあり、の二つのプログラムをより一体的に連携させることで計算の効率化を図ることも可能です。
例えば、膜屋根構造を開閉式にするために検討したのが、下図です。グリッド上のケーブルネットのつり合い形状には自由度があります。ただし、屋根を開放するためには、膜を吊り支持する点で囲まれた四辺形のすべてが、開閉用ガイドレールとなるケーブルに沿って開く際に引き裂かれないようにするための幾何学的な条件を満たす必要があります。さらに、それを満たす中で、ケーブル交差点のクランプをできるだけ小さくするために、ケーブル軸力の差を最小化(最適化)する解析を行い、屋根の開閉機構を提案しました。コンピュータによる膨大な計算と現代の解析技術の賜物です。
膜屋根の開閉を可能にしつつ、ケーブル構造の合理化を図るために、屋根のフォームファイディングとケーブル応力の最適化を行った。🄫日建設計
「構造の形態とシステムの合理性を追求することで、
限られた地球資源の有効利用に貢献し、
構造物の経済性を高め、
同時に新たな建築表現と多様な構造の美しさを探求する」
自然界にある知恵を基に、最先端のデジタル技術で、新しく美しい建築を追い求める。その温故知新の姿勢にデジタル技術を融合させた構造形態創生は、DELの本領が発揮される領域のひとつです。
