コストマネジメントレポート

2025年4-6月号を掲載しました。
「建設物価の騰勢、一服感あるも上昇率は底堅く推移」

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「コストマネジメントレポート」(季報)は、国内外の経済情勢を概観し、設計事務所トップシェアの実績から得られる豊富なコストデータを活かし、中立的な視点での独自の建設市場分析結果をタイムリーにお伝えしていきます。

※本レポートは情報提供を目的として日建設計 設計技術部門コストマネジメントグループが作成しています。記載の内容等は作成時点のものであり、完全性を保証するものではありません。内容等は予告なしに変更する場合があります。本レポートの無断転載を禁じます。

建設物価の騰勢、一服感あるも上昇率は底堅く推移

建設物価の上昇率は前期並みで推移

建設物価の上昇率は前期と同じ+2.7%と、2022年以降では低水準で推移しているものの、年率換算では10%を超える上昇率が続く(図1)。以前に建設物価が高騰した13-14年と、22年以降の動きを比べると、上昇率の最大値は同程度だが、2%を超える期間が長く、設備の寄与度が大きい。

ゼネコン完成工事利益率は上昇見込み

22年以降の建設物価上昇の中で、ゼネコン大手4社*2・準大手8社*3の平均完成工事利益率は低迷していたが、24年度末の予測値は大手4社平均8%、準大手7%と回復(図2)。大手ゼネコンの決算資料では来年度以降10%水準への回復についても言及しており、受注時採算改善の結果と考えられる。
  • 図1 NSBPI*1の前期比の推移 図1 NSBPI*1の前期比の推移
    日建設計作成。

  • 図2 大手・準大手ゼネコンの平均完成工事利益率の推移 図2 大手・準大手ゼネコンの平均完成工事利益率の推移
    各社決算資料より作成。24年度は第3四半期決算での期末予想の数値。

値上げ・価格転嫁の意識高まる

一方で建設業の価格転嫁マインドは製造業や非製造業と比べても高まっている。販売価格DIをみると22年12月以降、製造業は下落、非製造業は横ばいで推移するなか建設業の上昇が続いており、足元では40%ポイントを超え過去最高を更新し続けている(図3)。価格転嫁マインドの今後の推移に注意が必要である。

生コンは供給力不足により需要減でも価格上昇

供給力不足による価格上昇リスクが顕在化している。前号で軽量コンの出荷制限を取り上げたが、生コンクリート全体でみても出荷量・工場数が減少する一方で価格上昇が継続している(図4)。原材料及び輸送費・労務費の上昇が要因であるが、値上げをしないと供給体制を維持できない側面もある。他にもこうした資機材が潜在化している可能性があり注視が必要。
  • 図3 建設業・製造業・非製造業の販売価格DIの推移 図3 建設業・製造業・非製造業の販売価格DIの推移
    日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より作成。

  • 図4 生コン資材価格・工場数・出荷量の推移 図4 生コン資材価格・工場数・出荷量の推移
    全国生コンクリート工業組合連合会・全国生コンクリート協同組合連合会「コンクリート産業の推移」、経済調査会「積算資料」より作成。
    24年度の出荷量は4月~1月までの実績値を元に予測し指数化。

首都圏・関西圏は上昇の緩みが一服

日建設計標準建築費指数NSBPI*1

前期までは上昇の勢いに緩みが見られたが、今期の首都圏・関西圏の上昇幅は前期並みで推移した(図5・6)。
建築工事は仮設、躯体、仕上工事全般で上昇が継続するが、仮設、コンクリートなど一部工種を除き上昇の勢いは前期比で緩みが見られた。鉄筋は材の下落は継続するが、加工組立費など労務関連の上昇により横ばい。
設備工事は労務費、専門工事費、経費率は引き続き上昇がみられた。首都圏に比べると関西圏の値上げ圧力が弱い傾向は前期同様。一部の設備機器は新年度の価格改定が予定されており、見積価格への反映にも注視が必要。
  • 図5 NSBPIの推移 図5 NSBPIの推移
    図5・6ともに、関西圏の24Q4の指数を改訂した上で25Q1の指数を設定*4

  • 図6 NSBPIの増減率と建築・設備の寄与度 図6 NSBPIの増減率と建築・設備の寄与度

鋼材価格は横ばい継続も材種によっては値下げ

東京製鐵の鋼材販売価格は昨年10月の値下げ以降、横ばいが続いていたが、異形棒鋼について今年3月の販売価格を3千円引き下げた(図7)。鋼材需要の弱さや中国などの海外市況の影響と考えられる。一方で、人件費や電気代の上昇、販売量減による固定費負担増などを理由に値上げを表明するメーカーもあり、留意が必要。

労働者不足感は強まる一方

雇用人員判断DIを見ると、人手不足感が強い他業種では一服感が見られる一方で建設業は勢いが弱まることなく、宿泊・飲食サービスを超す勢いで上昇が続いている(図8)。
  • 図7 鋼材販売価格(東京製鐵)の推移 図7 鋼材販売価格(東京製鐵)の推移
    東京製鐵「販売価格」より作成。

  • 図8 雇用人員判断DI(大企業)の推移 図8 雇用人員判断DI(大企業)の推移
    日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より作成。

*1:日建設計標準建築費指数 NSBPI:
日建設計が独自に算出している建設物価の値動きを示す指数。標準賃貸オフィスを数量モデルとして、
独自調査により把握した実勢価格を随時反映させた工事価格を算出し指数化したもの。
第1四半期は1~3月、第2四半期は4~6月、第3四半期は7~9月、第4四半期は10~12月を示す。
*2:大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設の4社。
*3:安藤ハザマ、熊谷組、五洋建設、東急建設、戸田建設、西松建設、前田建設工業、三井住友建設の8社。
長谷工コーポレーションは他社に比べマンション分野の比重が大きいため対象外とした。
*4:関西圏のNSBPI関西圏について、24Q4の指数を下記のように下方修正。
改訂前:指数=211.1、前期比+4.6pt、+2.2%(寄与度:建築0.5、設備1.7)
改訂後:指数=210.2、前期比+3.7pt、+1.8%(寄与度:建築0.5、設備1.3)

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