コストマネジメントレポート

2025年10-12月号を掲載しました。
「労務需給ギャップの改善は見えないが建設物価の騰勢は収束の動きも」

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「コストマネジメントレポート」(季報)は、国内外の経済情勢を概観し、設計事務所トップシェアの実績から得られる豊富なコストデータを活かし、中立的な視点での独自の建設市場分析結果をタイムリーにお伝えしていきます。

※本レポートは情報提供を目的として日建設計 設計技術部門コストマネジメントグループが作成しています。記載の内容等は作成時点のものであり、完全性を保証するものではありません。内容等は予告なしに変更する場合があります。本レポートの無断転載を禁じます。

労務需給ギャップの改善は見えないが
建設物価の騰勢は収束の動きも

生コン・鋼材は需要減も価格の上昇・高止まりが続く

生コン出荷量・鋼材受注量ともに直近10年で減少傾向が続くも、鋼材価格は2020年度以降に高騰し、22年度以降は緩やかに下落。生コン価格は上昇が続く(図1)。生コン価格は鋼材価格に比べ輸送費・労務費の影響が大きく、今後も上昇が続く可能性があり留意が必要。

改善の兆しがみえない労務不足

建設業の雇用人員判断DIは上昇が継続(図2)。足元では宿泊・飲食サービスを超えるなど、人手不足感の強い他業種と比べても建設業の人手不足感の深刻さが窺える。
  • 図1 生コン出荷量・価格、鋼材受注量・価格の推移 図1 生コン出荷量・価格、鋼材受注量・価格の推移
    出典は*1参照。25年度の生コン出荷量・鋼材受注量は4⽉〜6・7⽉までの実績値を元に予測し指数化。

  • 図2 雇⽤⼈員判断DI(⼤企業)の推移 図2 雇⽤⼈員判断DI(⼤企業)の推移
    ⽇本銀⾏「全国企業短期経済観測調査」より作成。

22年度以降共通費率が上昇

22年度以降、共通費率*2は上昇が続き、22年比で1.6倍となった(図3)。時間外労働規制による工期長期化に加え、受注者の利益率改善の動きによるものと考えられる。工期長期化の影響は残るものの受注者の受注時採算の改善は進んでおり、共通費率の上昇は収束に向かう可能性が高い。

NSBPIの前年同期比 上昇幅はピークを過ぎて縮小

NSBPI*3総合指数の前年同期比は23年第3四半期の24%増をピークに足元では10%増となった(図4)。工事別でみても上昇率は縮小しており、建設物価の騰勢は収束に向かっている。前号に引き続き、昨今の相場に比べ低いコスト水準の見積提示が増えており、今後の動きを慎重に見極める必要がある。
  • 図3 共通費率*2の推移 図3 共通費率*2の推移
    日建設計作成。

  • 図4 NSBPI*3の前年同期比の推移 図4 NSBPI*3の前年同期比の推移
    日建設計作成。

前期比上昇率は各地区とも2%を下回る

日建設計標準建築費指数NSBPI*3

建築工事の上昇率は前期並みで推移するが、設備工事は上昇の勢いが弱まり、全体の上昇率は逓減。(図5・6)。
建築工事は仮設工事や一部の躯体工事、仕上工事は上昇が続いているが、鋼材価格の下落もあり上昇率は前期並みで推移している。設備工事は依然として建築よりも需給逼迫が強いものの、労務費、専門工事費、経費率の上昇圧力は前期に比べ弱まっている。
  • 図5 NSBPIの推移 図5 NSBPIの推移

  • 図6 NSBPIの増減率と建築・設備の寄与度 図6 NSBPIの増減率と建築・設備の寄与度

仕入価格・販売価格DIの乖離が縮小

仕入価格DIは22年9月をピークに下落し、23年12月以降はほぼ横ばいで推移。販売価格DIは22年9月以降も上昇が続いており、仕入価格DIとの乖離が縮小している(図7)。価格転嫁が浸透してきた様子が窺える。今後は建設物価の騰勢が収束に向かうことに伴って、販売価格DIは下落に転じると考えられる。

4週8閉所以上の達成は半数に留まる

時間外労働規制を受けて4週8閉所確保の動きが広まっているものの、24年度の4週8閉所達成率は50%に留まる(図8)。閉所日による工期への影響は大きく、工期の長期化はまだ継続する可能性があり留意が必要。
  • 図7 建設業(⼤企業)の仕⼊価格・販売価格DIの推移 図7 建設業(⼤企業)の仕⼊価格・販売価格DIの推移
    日本銀⾏「企業物価指数」より作成。

  • 図8 4週8閉所の⽐率の推移 図8 4週8閉所の⽐率の推移
    ⽇本建設業連合会「週休⼆⽇実現⾏動計画2024年度通期 フォローアップ報告書」より作成。

*1:⽇本鉄鋼連盟「鉄鋼需給統計⽉報 普通鋼鋼材⽤途別受注(内需)」、
全国⽣コンクリート⼯業組合連合会・全国⽣コンクリート協同組合連合会「コンクリート産業の推移」、
経済調査会「積算資料」より作成。
*2:直接工事費に対する共通仮設工事費と諸経費の比率で、工期や施工者利益率の影響を受けやすい指標。
*3:日建設計標準建築費指数 NSBPI:
日建設計が独自に算出している建設物価の値動きを示す指数。標準賃貸オフィスを数量モデルとして、
独自調査により把握した実勢価格を随時反映させた工事価格を算出し指数化したもの。
第1四半期は1~3月、第2四半期は4~6月、第3四半期は7~9月、第4四半期は10~12月を示す。

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