コストマネジメントレポート

2023年1-3月号を掲載しました。
「建設物価の伸びが拡大 堅調な受注と持続する資材価格上昇が要因」

Scroll Down

「コストマネジメントレポート」(季報)は、国内外の経済情勢を概観し、設計事務所トップシェアの実績から得られる豊富なコストデータを活かし、中立的な視点での独自の建設市場分析結果をタイムリーにお伝えしていきます。

※本レポートは情報提供を目的として日建設計 設計監理部門コストマネジメントグループが作成しています。記載の内容等は作成時点のものであり、完全性を保証するものではありません。内容等は予告なしに変更する場合があります。本レポートの無断転載を禁じます。

建設物価の伸びが拡大
堅調な受注と持続する資材価格上昇が要因

堅調な受注高

2022年4~11月の建築大手50社受注高累計は過去15年と比べ最大となっており、堅調な受注状況が窺える(図1)。特に設備サブコンの繁忙が顕著で、人手不足を理由に新規受注を抑制する動きがみられるなど、需給ギャップが建設物価の上昇要因となっている。

競争案件と特命案件の 価格差が縮小

好調な受注を背景に価格競争効果が働きにくくなっている。価格競争案件の平均乖離率*1は20、21年にマイナス9~10%で推移していたが、22年はプラスに転じた(図2)。その結果、昨年まで続いていた特命案件との価格二極化が解消に向かい、価格競争が発生しにくい状況にあることが分かる。
*1:平均乖離率:見積金額が予定価格からどれだけ上振れた(下振れた)かを示す乖離率について、年毎に各案件の乖離率を平均した値。
  • 図1 大手50社の建築受注高の推移 図1 大手50社の建築受注高の推移
    国土交通省「建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)」より作成

  • 図2 価格競争案件と特命案件の平均乖離率 図2 価格競争案件と特命案件の平均乖離率
    日建設計資料より作成

資材価格の上昇が続く

原材料価格・人件費の上昇、為替相場の変動などを理由に、金属、ガラス、生コンなど幅広い品目で価格上昇が続いている(図3)。鋼材は東京製鐵の公表販売価格が足元横ばいとなる一方、施工者見積単価の上昇は続いており、今後も注視が必要である。

販売価格・仕入価格ともに上昇するも乖離が拡大

20年6月以降上昇を続けている日銀短観の仕入価格判断DI(建設業・大企業)は、足元若干減少したが68%ポイントと依然高水準にある。販売価格DIも21年3月以降上昇が続いているが、仕入価格DIと比べると上昇幅が小さく、仕入価格上昇分を必ずしも販売価格に転嫁できていない状況が窺える(図4) 。
需給ギャップの引き締まりやインフレマインドの浸透など原価上昇を工事費に転嫁しやすい状況が続くと、今後も建設物価の上昇が続く可能性が高い。
  • 図3 企業物価指数の推移 図3 企業物価指数の推移
    日本銀行「企業物価指数」より作成

  • 図4 販売価格・仕入価格判断DI︓建設業・大企業 図4 販売価格・仕入価格判断DI︓建設業・大企業
    日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より作成

建築・設備共に再び価格上昇圧力が強まる

日建設計標準建築費指数NSBPI

総合指数は前期比で約7%、前年同期比で約2割上昇。
建築、設備共に様々な工種で価格が上昇した。特に昨今調達が厳しい設備工事や鉄骨工事の上昇圧力が高まっている。
施工会社は、多くの手持ち工事に加え受注も好調であるため、上昇圧力が強い工種の価格転嫁が継続する可能性が高い。
  • 図5 NSBPIの推移 図5 NSBPIの推移

  • 図6 NSBPIの増減率と建築・設備の寄与度 図6 NSBPIの増減率と建築・設備の寄与度

生コン価格が上昇

東京地区生コンクリート協同組合が2000円/㎥の値上げを表明するなど、各地区生コン組合が23年4月頃からの価格改定を公表している。値上げの主な要因は燃料石炭、骨材、輸送費の上昇。鋼材価格の上昇と相まって躯体工事の価格上昇圧力が強まっている。

労働者不足感は高い水準で推移

22年12月の労働者過不足率は0.9%となり、21年12月以降で初めて1.0%を下回ったが、依然として高い水準で推移している(図8)。職種別や地域別で突出した傾向は見られないが、需給の改善の兆しは見えていない。
  • 図7 生コン価格の推移 図7 生コン価格の推移
    経済調査会「積算資料」より作成

  • 図8 建設技能労働者過不足率の推移 図8 建設技能労働者過不足率の推移
    国土交通省「建設労働需給調査(8職種計・全国・季節調整値)」より作成

当サイトでは、クッキー(Cookie)を使用しています。このウェブサイトを引き続き使用することにより、お客様はクッキーの使用に同意するものとします。Our policy.