コストマネジメントレポート

2024年1-3月号を掲載しました。
「24年の建設物価は騰勢弱まるも上昇継続がメインシナリオ 上振れ・下振れリスクにも留意」

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「コストマネジメントレポート」(季報)は、国内外の経済情勢を概観し、設計事務所トップシェアの実績から得られる豊富なコストデータを活かし、中立的な視点での独自の建設市場分析結果をタイムリーにお伝えしていきます。

※本レポートは情報提供を目的として日建設計 設計監理部門コストマネジメントグループが作成しています。記載の内容等は作成時点のものであり、完全性を保証するものではありません。内容等は予告なしに変更する場合があります。本レポートの無断転載を禁じます。

24年の建設物価は騰勢弱まるも上昇継続がメインシナリオ 上振れ・下振れリスクにも留意

24年の建設物価は緩やかな上昇に落ち着く見通し

建設物価(NSBPI*1)は2023年末までの2年間で4割上昇。原材料費高騰などによる資材価格の高騰、人手不足による労務費の上昇、需要過多による需給ギャップの拡大を要因として高い上昇率が継続した。24年は、資材価格は横ばい、労務費は上昇継続、需給ギャップは横ばいとなり、上昇は継続するものの傾きは緩やかになる可能性が高い(図1)。一方で各要素とも上振れ・下振れリスクがあり留意が必要。

資材価格は高止まり

企業物価指数が22年後半に横ばいに転じた後も建設費への価格転嫁が継続したため、建設資材価格は23年も上昇が続いた。仕入価格DIと販売価格DIの乖離は縮小傾向にあり価格転嫁の浸透が覗えることに加え、企業物価指数は24年も横ばい見通しであることから、24年の資材価格は高止まると予測する(図2・3)。一方で外的ショックに伴う供給制約などにより資材価格高騰につながるリスクは残る。
  • 図1 2024年の建設物価(NSBPI)見通し 図1 2024年の建設物価(NSBPI)見通し
    日建設計作成

  • 図2 建設業(大企業)の販売価格・仕入価格DIの推移 図2 建設業(大企業)の販売価格・仕入価格DIの推移
    日本銀行「企業物価指数」より作成

人手不足、24年問題などによる労働供給制約が続く

労務費は担い手不足を背景に上昇が続いている。雇用人員判断DIは2013年以降、他業種に比べ建設業の人手不足が急速に進行したことを示しており、足元では過去最高水準にある(図4)。24年問題*2も相まって限られた労働力の奪い合いにより、労務費上昇は継続すると予測。一方で需給ギャップの解消が進めばインフレ並みの賃金上昇に留まる可能性はある。

拡大した需給ギャップの解消は進まない

24・25年の実質民間住宅投資・実質民間企業設備投資の合計は前年比0.3%、1.8%上昇見込み(図5)。堅調な投資を背景に需給ギャップは横ばいが続くと予測するが、建設費高騰による計画中断、金利上昇による投資意欲減衰など需給ギャップ解消が進む下振れシナリオにも留意が必要。
  • 図3 企業物価指数の推移 図3 企業物価指数の推移
    日本銀行「企業物価指数」、⽇本経済研究センター「短期経済予測」より作成
    建設用材料(中間財)の指数は2015年基準の需要段階別・用途別指数 品目分類編成・ウェイト一覧をもとに作成

  • 図4 雇用人員判断DI(大企業)の推移 図4 雇用人員判断DI(大企業)の推移
    日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より作成

  • 図5 実質民間住宅投資・ 実質民間企業設備投資の合計値の推移 図5 実質民間住宅投資・実質民間企業設備投資の合計値の推移
    資料:内閣府「四半期別GDP速報」、⽇本経済研究センター「短期経済予測」より作成

総合指数はわずかに勢い弱まるも依然として上昇継続

日建設計標準建築費指数NSBPI*1

総合指数は首都圏、関西圏、東海圏ともにやや勢いは弱まったものの、前期から約3%上昇し上昇傾向は継続(図6・7)。
建築工事は仮設、躯体、仕上が上昇。設備工事は労務費や専門工事価格が継続して上昇。24年問題などにより諸経費率も前期に引き続き上昇している。
  • 図6 NSBPIの推移 図6 NSBPIの推移

  • 図7 NSBPIの増減率と建築・設備の寄与度 図7 NSBPIの増減率と建築・設備の寄与度

NSBPIと建設物価調査会「建築費指数」の差異

NSBPIと建設物価調査会「建築費指数」について、建築・設備別に前期比を比較すると、設備工事の差が顕著である (図8・9)。
これは、NSBPIは「建築費指数」に比べ、施工者の受注意欲など営業判断も含めた工事価格を対象としていること、自動制御や消火設備など専門工事業者や設備サブコンの繁忙による強気な受注姿勢を背景としたゼネコン見積の上振れを織り込んでいること、などが要因と考える。
  • 図8 建築についてのNSBPIと建築費指数の前期比の推移 図8 建築についてのNSBPIと建築費指数の前期比の推移
    日建設計資料、建設物価調査会「建築費指数」より作成。
    前期比はNSBPI・建築費指数ともに四半期毎の増減率。

  • 図9 設備についてのNSBPIと建築費指数の前期比の推移 図9 設備についてのNSBPIと建築費指数の前期比の推移
    日建設計資料、建設物価調査会「建築費指数」より作成
    前期比はNSBPI・建築費指数ともに四半期毎の増減率。

*1:日建設計標準建築費指数 NSBPI:
日建設計が独自に算出している建設物価の値動きを示す指数。標準賃貸オフィスを数量モデルとして、
独自調査により把握した実勢価格を随時反映させた工事価格を算出し指数化したもの。
第1四半期は1~3月、第2四半期は4~6月、第3四半期は7~9月、第4四半期は10~12月を示す。
*2:2024年4月から建設業・物流に時間外労働上限規制が適用される問題

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