コストマネジメントレポート

2024年4-6月号を掲載しました。
「建設物価の騰勢はやや緩むも高い上昇率が継続 施工予定者の確保も課題」

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「コストマネジメントレポート」(季報)は、国内外の経済情勢を概観し、設計事務所トップシェアの実績から得られる豊富なコストデータを活かし、中立的な視点での独自の建設市場分析結果をタイムリーにお伝えしていきます。

※本レポートは情報提供を目的として日建設計 設計監理部門コストマネジメントグループが作成しています。記載の内容等は作成時点のものであり、完全性を保証するものではありません。内容等は予告なしに変更する場合があります。本レポートの無断転載を禁じます。

建設物価の騰勢はやや緩むも高い上昇率が継続
施工予定者の確保も課題

堅調な受注状況が継続

2023年4-12月期の建設業者大手50社・設備工事業者(各工事主要20社) の受注高はともに直近で最大と堅調(図1)。今後も半導体関連投資などが控えており、需給ギャップの解消は当面見通せない状況にある。

完成工事利益率は低調

一方で19~21年頃に厳しい価格競争下で受注した大型工事や24年問題*1などの影響で、完成工事利益率は低迷が続いている(図2)。完成工事利益率と受注時採算との間にはタイムラグがあるが、各社とも利益率の回復は25年度以降とコメントしており、今後も受注時採算改善にむけ選別受注傾向は継続・強化すると考える。
  • 図1 建設業者・設備工事事業者の受注高の推移 図1 建設業者・設備工事事業者の受注高の推移
    国土交通省「建設工事受注動態統計調査(大手50社)」
          「設備工事業に係る受注高調査結果(各工事主要20社)」

  • 図2 大手施工会社4社の完成工事利益率平均の推移 図2 大手施工会社4社の完成工事利益率平均の推移
    各社決算資料より作成

建設物価上昇率はやや緩むも高止まり

建設物価(NSBPI*2)の上昇率は、22年10-12月期以降4.7%超の上昇率が続いたが、23年10-12月期以降は3.2%、3.5%と一時期の勢いからはやや緩むも年率にすると1割を超える高い上昇率が続いている(図3)。なお、建設物価は施工予定者が見積を提出した事例を反映しており、頻発する見積辞退などの状況は直接反映していないことにも留意が必要である。

選別受注の傾向が顕著に

適切な競争環境下で施工者を選定することが困難になっている。施工各社は複数社による競争見積を避ける姿勢を強めており、見積依頼先の半数以上が辞退するケースや、1社のみ残り特命状態になるケース、場合によっては施工予定者を確保できない事例も生じている(図4)。施工予定者の確保が、建設物価の動向とともにプロジェクト推進上の大きなリスク要因となっている。
  • 図3 NSBPI(首都圏)の上昇率の推移 図3 NSBPI(首都圏)の上昇率の推移
    日建設計作成

  • 図4 見積参加者の状況 図4 見積参加者の状況
    日建設計作成

各地区とも上昇継続、関西・東海が首都圏との差を詰める

日建設計標準建築費指数NSBPI*2

首都圏は前期同等の上昇にとどまる一方、関西圏、東海圏は騰勢を再び強めて首都圏との差を詰める結果となった(図5・6)。
建築工事は仮設、躯体、仕上、設備工事は労務費や専門工事費、諸経費率などが前期に引き続き上昇している。需給ギャップ拡大を背景とした選別受注強化により、 24年問題対応などの建設物価上昇リスクを提出見積に反映させる傾向が建設物価を押し上げている。
  • 図5 NSBPIの推移 図5 NSBPIの推移

  • 図6 NSBPIの増減率と建築・設備の寄与度 図6 NSBPIの増減率と建築・設備の寄与度

NSBPIの建築・設備比率は設備が上昇

直近NSBPIが急上昇する前の21年7-9月期からの工種別の上昇率をみると、建築(仕上、仮設・土工・躯体)に比べ、設備(電気・空調・衛生)、諸経費が大きく上昇した(図7)。これによりNSBPIの構成比も、設備+3.3、諸経費+2.4、建築が▲5.7ポイント増減しており、工種バランスが変化していることがわかる(図8)。

労働者不足感は高い水準で推移

24年2月の労働者過不足率は1.7%の不足となり、21年12月以降の高い水準での推移が継続している(図9)。職種別や地域別で突出した傾向は見られず、需給改善の兆しは見えない。 
  • 図7 工種別NSBPIの上昇率     21年7-9月期比 図7 工種別NSBPIの上昇率
       21年7-9月期比
    日建設計作成

  • 図8 NSBPIの構成比の比較 図8 NSBPIの構成比の比較
    日建設計作成

  • 図9 建設技能労働者過不足率の推移 図9 建設技能労働者過不足率の推移
    国土交通省「建設労働需給調査(8職種計・全国・季節調整値)」より作成

*1:2024年4月から建設業・物流に時間外労働上限規制が適用される問題
*2:日建設計標準建築費指数 NSBPI:
日建設計が独自に算出している建設物価の値動きを示す指数。標準賃貸オフィスを数量モデルとして、
独自調査により把握した実勢価格を随時反映させた工事価格を算出し指数化したもの。
第1四半期は1~3月、第2四半期は4~6月、第3四半期は7~9月、第4四半期は10~12月を示す。

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